Friday, October 23, 2009

TV 鑑賞記


9月にアメリカの新TVシーズンが始まってから1ヶ月余り。今まで観てきたドラマ、新しく観始めたドラマをちょっとまとめてみた。

今まで観てきたドラマ:

「CSI:科学捜査班」
ウィリアム・ピーターセンがローレンス・フィッシュバーンに代わったことにはかなりガッカリしたけれど、ドラマとしては相変わらず脚本がしっかりしているし、とにかく、こんなに長い間、続いているドラマなのにネタが尽きないし、マンネリ化しないだけでもスゴイ。こうなったら最後まで観続けてあげたいと思っている。

「Fringe」
FBIエージェントのヒロイン、オリヴィア・ダナムと、彼女をサポートするウォルター&ピーター・ビショップ親子が毎回、遭遇する超常現象にはいつもワクワクさせられる。毎週、「今週の超常現象」みたいな感じで、人間爆弾やら、人食いモグラ青年やら、骨髄ヴァンパイアやら、次々と奇々怪々な事件が起こる。映像もテクノロジーも違うけど、小さい時に怖々と見ていた円谷プロの「怪奇大作戦」を思い起こさせるようなノリが好き。精神病棟に入っていたウォルター博士(「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」の王役を演じたジョン・ノーブルが素晴らしい)のへんてこりんだけどラブリーな行動も楽しい。

「Lie To Me」
“人間嘘発見器”でも呼びたくなるティム・ロス演じる主人公が、相手の嘘を見破っていくだけという設定のドラマでは厳しくないかい?と、最初は思ったけれど、どうしてどうして、手を変え品を変えて、いろいろなケースが持ち込まれてきて飽きさせないし、ロスのエキセントリックな持ち味が120%活かされていて、スリリングなドラマ作りに成功している。

「HEROES ヒーローズ」
すっごく面白かったシーズン1、いきなり失速したシーズン2、そしてシーズン2の失策を挽回することが期待されていたが果たせなかったシーズン3に続くシーズン4。まあ悪くはないけれど、シーズン1の輝きは戻っていないというのが正直なところ。やっぱり、「Save the cheerleadr, save the world.」のスローガンの決着のつけ方にイマイチ盛り上がりが足りなかったことと、その後、目的を失ってしまったヒーローたちに生気を吹き込むことができなかったこと、さらに、それを補おうとこれでもか、これでもかと新しいスーパーたちを加えたのは失敗だったと思う。

「Dollhouse」
謎の会社ドールハウスを追ってきたFBIのエージェントが、ドールハウスの従業員になるあたりから、ちょっとストーリー展開がわざとらしくなってきた。あと、主演のイライザ・ダシュクが大根ちゃんなので困る。近日放映のエピソードに私が好きな「サラ・コナー・クロニクルズ」のギャル系ターミネーターのキャメロンことサマー・グローがゲスト出演するそうなので、それまでは観ようかと考えている。

新しくスタートしたドラマ:

「Flash Forward」(上の写真が出演者たち)
世界中が全く同じ瞬間に失神状態におちいり、その間に未来の自分の“夢”を見た(=フラッシュバックではなくてフラッシュフォワード)という事実の謎を追いつつ、自分の未来に対して悲喜こもごもの思いを持つ人々を描くドラマ。レイフ・ファインズの弟で「恋におちたシェイクスピア」のジョセフ・ファインズ主演。パイロット・エピソードの特撮の映像はなかなかのものだった。今年の新番組中、一番の期待株。

「Trauma」
大事故の現場に向かう救命隊員たちが主人公のドラマ。パイロット・エピソードの特撮の迫力には度肝を抜かれた。TVでもここまで出来るのか!と感心した。人間が死に様をネタにする医療ドラマというのは苦手なジャンルなのだが、大事故の瞬間、人間はどういう反応を見せるか、という描写には興味深いものがあるので、観ることにした次第。

「The Forgotten」
迷宮入りになりかかっている殺人事件の被害者を探し出す民間人のボランティア・グループ(その1人をクリスチャン・スレーターが演じている)の活躍を描くドラマ。冒頭の「アメリカン・ビューティ」風(「サンセット大通り」風と呼ぶべきか)に、“忘れられた(forgotten)”死者の声からドラマが始まるところは、ちょっと“クサイ”んだけど、殺人犯を探すのではなく、まず被害者を探すというアプローチにはちょっと新鮮さがあるので、観続けている。ただ、なんとなくキャンセルされそうな予感もあったりして…

「Eastwick」
映画「イーストウィックの魔女たち」をTVドラマ化したもの。話がずっと続いていく“シリアル”タイプのドラマなので、今後の話の展開に依って興味が持続するかどうかが決まりそう。

というわけで、始まる時にワクワクした気分にしてくれるのは、これまで観てきたドラマの中には3本(「CSI」、「Fringe」、「Lie to Me」)、新番組の中には2本(「Flash Forward」、「Trauma」)なので、今年は新番組が“旧番組”に負けていることに。
それにしても、全部で9本の番組を観続けているけど、1日1本しか観られないことがほとんどなので、そのうち、ケーブル・レシーバーの録画キャパを超えてしまうのではないかというのが心配…

Friday, October 16, 2009

「舞姫 テレプシコーラ」第一部 完読!


9月から読み始めた山岸涼子の「舞姫 テレプシコーラ」第一部を、この間、読み終わった。
漫画はすぐに読めてしまうから、ブランディでも飲むような感じで(ホントか)ちびりちびりと読み惜しみしつつ読んできたけど、話が面白いから先が読みたくて読みたくて、仕事の合間に「10ページぐらいだけ!」と思って読み始めても、気がついたらまるまる1巻分読み終わっていた、なんてことも。

「テレプシコーラ」は、1歳半違いの姉妹、千花(ちか)と六花(ゆき)が主人公なのだが、「アラベスク」での姉妹同様、母親はバレエ教師で、姉がしっかりとした優等生タイプで妹は気が弱くすぐへたれるというキャラ。そこに、見かけは男の子みたいだが天才的にバレエが上手い謎の(?)転校生やら、太めゆえに拒食症になってしまう少女やらが絡み、バレエ・コンクールや、「くるみ割人形」の公演といった、山場のシーンが織り込まれて、本当にドラマチック。

しかし、何よりビックリしたのは、最終巻にあたる第10巻の展開で自分が大泣きしてしまったこと。
これまで、映画を観て泣いたことは何回かあるし、本を読んで泣いたことも1~2度はあった。でも、漫画を読んで大笑いしたことはあっても泣いた記憶は無い。しかも、ティッシュが何枚も要るほどの大泣き。漫画、それも山岸涼子作品を読んで大泣きするとは思いもよらなかった。
きっと自分でも知らないうちに、登場人物にえらく感情移入していたのだろう。

日本では、既に「テレプシコーラ」の第二部が始まって、単行本も出ているらしい。
また全巻出揃ったところで、買おうっと。

Tuesday, October 6, 2009

INGLORIOUS BASTERDS


もう先々週の話になってしまうけれど、配偶者に昼間の時間が取れた日があったので、マチネで映画を観に行くことにした。

選んだ映画はクエンティン・タランティーノの新作「イングローリアス・バスターズ」。
配偶者も私もタランティーノ作品は大好きで、最初のデートで映画談議に話が弾んだ後、2回目のデートで配偶者は私にいきなり「パルプ・フィクション」のサントラCDをプレゼントしてくれたことなんかもあった。
さて、「イングローリアス・バスターズ」。
まず、冒頭のクレジット・シークエンスのバックグランドミュージックに「アラモ」のサントラが登場。オープニング・シーンもちょっと「シェーン」を連想させる映像だったりして、フランスが舞台なのにいきなり西部劇調で始まった。いや、ヨーロッパが舞台だからマカロニ・ウエスタンの方が近いのかな。(上にコピーしたポスターなんかも、セルジオ・レオーネっぽい?)だったら、“クレープ・ウエスタン”とかなんとか呼ぶべき?なんて、くだらない想いが一瞬頭をよぎったりして。

ストーリーは、“イングローリアス・バスターズ”(“不名誉なろくでなしたち”という意:ただし、本来ならBastardsとスペルするところをBasterdsとしてるのはドイツ人が付けた仇名だからわざとミススペリングしているとか??)と呼ばれる、アメリカ人の少数部隊がフランスを占領していたナチスドイツ軍を次々と攻撃していくゲリラ戦記と、酷薄なゲシュタポに家族を皆殺しされた女性の復讐譚とが、並行して進行し、最後に“Operation Kino”と呼ばれる作戦で、2つのストーリーが集約するという形を取っている。

話の展開も、登場人物のキャラ作りも、台詞も、ディテールも、さすがタランティーノ、というか、映画という媒体を知り尽くしている人物によるものだということが、すごく良く解って、観ていて心地良かった。

キャスティングも非常に上手い。イングローリアス・バスターズの中には、“ドイツ語に堪能なイギリス人将校”や、“オーストリアからアメリカに移民したユダヤ人”という設定のキャラが出てくるんだけれど、そのいずれにも英語が堪能なドイツ人俳優を起用。アメリカ人、イギリス人、ドイツ人のいずれが観ても、しっかりリアリティのあるキャスティングになっている。(この言葉の問題は、もしかして「キル・ビル」でルーシー・リューを日本人にした失敗から学んだのかも?なんて邪推ですが)

しかし、キャスティングにおける最も顕著な成功は、何といっても、オーストリア出身の俳優、クリストフ・ヴァルツの起用だろう。ヴァルツの演じたハンス・ランダ大佐は、表面上は非常に紳士的で優雅ですらあるが、教授と見まがうような容貌の下にはサディスティックな怪物が潜んでいるという不気味さを体現していて見事だった。ちなみに、ヴァルツはオーストリア生まれという生い立ちもあって、語学に堪能。映画の中でも、まずは流暢なフランス語を披露した後、「私には英語の方が楽なので」とことわって(最初はアメリカ人の観客のための御都合主義的な言い訳かと思ったが、実はしっかりとした意味があることが後で判る)、これまた流暢な英語で台詞をしゃべる。もちろん、母国語であるドイツ語は完璧。さらに、イタリア語まで披露するシーンがあって、そのマルチリンガルぶりには、大いに脱帽した。
「イングロリアス・バスターズ」は、このクリストフ・ヴァルツの演技を観に行くだけの目的で観に行っても損はしない映画である。