Wednesday, January 11, 2017

再び「ラ・ラ・ランド」について


去年の秋から冬にかけて観た映画について書いた日記でも触れたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」だけど、ゴールデングローブ賞のコメディ・ミュージカル部門で作品賞をはじめノミネートされた7部門全てで受賞を果たすという記録的快挙を成し遂げたので、もう少し詳しく書きたいと思う。

「ラ・ラ・ランド」は一言で表現すれば、ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーで、それ自体としては特に傑出したストーリーだというわけではないが、夢を追う若き2人の住む街がla la landと称されるロサンゼルスだというところが象徴的かつ効果的なセッティングになっている。la la landという呼称は、LAと呼ばれるLos Angelesと、la la =夢心地のland=地、要は「夢見る街」という意味を二重に含めた言葉として、やや揶揄的にロサンゼルスを呼ぶ際に使われる言葉だが、「ラ・ラ・ランド」はそれを逆手に取り、夢見て何が悪い?、夢を見ることこそ若さの特権じゃないか?と主張する。
そんな映画だからこそ、主人公たちはすんなりと歌と踊りに入っていけるわけで、そんな主題や舞台を選んだ監督・脚本のデミアン・チャゼルの才能には感心した。

ところで、この映画は、実に印象的なダンス・シーンで始まるのだけれど、それを見てすぐに連想したのは、ジャック・ドゥミ監督の「ロシュフォールの恋人たち」だった。特に下のシーンで使っている曲や全体の印象がすごく良く似ている。


*ダンサーの中でオレンジ色のシャツを着ているのは「ウエストサイド・ストーリー」で有名なジョージ・チャキリス

ちなみに、今年のゴールデングローブ賞は、「ラ・ラ・ランド」のパロディで始まる実に愉快なオープニングだった。
(*以下のクリップは「ラ・ラ・ランド」本編を観てから見ることをオススメします)

Sunday, January 8, 2017

秋〜冬季にかけて観た映画たち

9月29日に「マグニフィセント・セブン」について書いて以来、年末までに観た映画について書きそびれていたので、ここで一挙紹介します。

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」Miss Peregrine's Home for Peculiar Children
いかにもティム・バートンな世界が展開するファンタジー。時空を超えたストーリーがスリリング。バートンのベスト作ではないけれど、バートン・ファンは必見でしょう。



「ザ・コンサルタント」The Accountant
ベン・アフレックが昼は自閉症の会計士、夜はプロの殺し屋として暗躍するユニークなキャラを演じるクライム・サスペンス映画。アメリカの映画評論家の間での評判はイマイチだったけど、私は結構好きだった。一風変わったアクション映画が好きな向きにオススメ。



「Keeping Up with the Joneses」(日本公開未定。DVDスルーになる可能性もあるかも?)
ザック・ガリフィアナキスとアイラ・フィッシャー演じる平々凡々な夫婦の近くに、ジョン・ハムとガル・”ワンダーウーマン”・ガドット演じるジョーンズ夫妻が引っ越してくる。一見パーフェクトな夫婦に見えるジョーンズ夫妻だったが、その正体は… というドタバタ・コメディ。御代はタダの試写だから観に行ったけれど、ケーブル放映まで待っても全然オッケーな映画。ワンダーウーマンのパーフェクト・バディを拝みたい向きにはオススメ、かな?



「インフェルノ」Inferno
日本でも去年の10月に公開されていましたが、すごく凡庸な出来。ロン・ハワード、どうしちゃったんだよ〜〜



「ドクター・ストレンジ」Doctor Strange
何と言ってもベネ様演じるドクター・ストレンジがカッコ良すぎ!!建物ぐるぐる回りまくるCGも良くできていたし、クスッと笑える台詞も多くて大いに楽しみました。ベネ様のファンはもちろん、スーパーヒーローが苦手な人にもイケるんじゃないか思う映画です。



「メッセージ」Arrival
エイリアンが突然、地球上に来訪し、彼らが発するメッセージをエイミー・アダムズ演じる言語学者が解読を試みるというストーリー。というと、「未知との遭遇」あたりを連想する人が多いかもしれないけれど、もっとずっと深い内容を包含する作品。エイリアンものSFを期待して観に行くと期待外れになってしまうかもしれないけれど、そのテの映画は興味無いと思ってスルーしたら絶対損する佳作。わたし的には今年のベスト1を挙げたい映画。



「Nocturnal Animals」
これまた主演のエイミー・アダムズ演じるギャラリーのオーナー、スーザンのところにジェイク・グレンホール演じる元夫から「ノクターナル・アニマルズ(夜行動物)」と題された小説の草稿が送られてくる。映画は小説を読むスーザンと小説の内容とが交互に登場して同時進行していく形が取られている。公開された年に数々の映画賞にノミネートされた「シングルマン」を監督したトム・フォードの新作ということで期待して観に行ったのだけれど、とにかく劇中小説の内容が救いようのないストーリーで滅入ってしまった。完成度の高い作品であることは認めるけれど、観た後の疲弊感が半端なかったです。



「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」Fantastic Beasts and Where to Find Them
日本でも去年の11月に公開済みの作品。ハリポタ・シリーズは本は未読、映画も最初の4〜5本しか観ていないのだけれど、それでもとても面白かった。パン屋の経営を夢見るジェイコブ・コワルスキーを演じていたダン・フォグラーがすごく良い味を出していました。



「Hidden Figures」
1960年代のアメリカの宇宙開発事業を人知れず支えていた黒人女性数学者たちを描く作品。声高ではないけれど、しっかりと地を踏みしめて自分の姿勢を貫くヒロインたち、そして彼女たちを演じるタラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネル・モナエが素晴らしい。理系女子たち、そして彼女たちを支援する親や先生たちには是非観てもらいたい映画。(高校生の娘はこの映画を観た後「よし!私も数学と物理の期末試験頑張る!」とインスパイアされていましたから−笑)



「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」Rogue One: A Star Wars Story
これも日本公開済みですね。期待していなかったんだけど個人的には「フォースの覚醒」より見応えがありました。ドニー・イェンの座頭市みたいな戦士がカッコ良かったなあ。



「Fences」
1983年に初演されたオーガスト・ウィルソンの同名舞台劇を、2010年のリバイバル上演の際に主役を演じてトニー賞を受賞したデンゼル・ワシントンが監督、主演した作品。1950年代のピッツバーグを舞台に、初老夫婦の日常を描く。デンゼルと共演のヴィオラ・デイヴィス(2010年の舞台版にも出演してトニー賞を受賞)の演技の迫力は凄かったけど、舞台劇の映画化ということで、映像的なダイナミズムに欠けるところがあったのがちょっと残念だった。



「パッセンジャー」Passengers
120年間、眠りにつきながら惑星の植民地に旅する5000人の地球人たちの中で1人だけ、目覚めるべき時の90年も前に目覚めてしまったエンジニア(クリス・プラット)をめぐるアドベンチャーを描く映画。先の展開が読めてしまうところもあったけれど、プラットと共演のジェニファー・ローレンスの存在感でなんとか最後まで飽きさせずに観られます。非常に上出来なCGIもみもの。
<この映画に限っては知識を最小限にして観た方が楽しめるので予告編はリンクしませーん>


「アサシン・クリード」Assassin's Creed
ビデオゲームの映画化ということで興味があまり無かったので、よっぽど試写をパスしようかと思ったのだけれど、出演者がマイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤール、ジェレミー・アイアンズという豪華キャストだったから、それほどハズレはなかろうと思ったのですが…すごく退屈でした。大したヒネリの無いストーリーに、メリハリを欠いたアクション・シーンがこれでもか、これでもかと続くだけの映画だったんで。ビデオゲーム版のファンの人にはこれでも面白いのかな…



「ラ・ラ・ランド」La La Land
最高に楽しいミュージカル映画。La La Landことロサンゼルスを舞台に、エマ・ストーン演じる女優の卵とライアン・ゴズリング演じる自分の店を持つことを夢見るジャズ・ミュージシャンの青年の恋を歌と踊りで見せるという他愛の無い内容ではあるのだけれど、「ロシュフォールの恋人たち」をお手本にしたと思われるノリがすごくチャーミング。31歳でこれだけ完成度の高いミュージカルを監督したデミアン・チャゼル(「セッション」Whiplash)は、やはりタダ者ではなかったようで。デート映画としても超オススメ!
ちなみに今日発表されたゴールデン・グローブ賞ではノミネートされた7部門全て(作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞、音楽賞、主題歌賞)で受賞を果たす快挙を遂げていました。



<番外編>
「2001年宇宙の旅」2001: A Space Odyssey
アメリカン・シネマテークが70mmプリントで上映するというので、ハリウッドのエジプシャン・シアターまで娘と一緒に観に行きました。私はこれが3度目の鑑賞。いまだに古くならないキューブリック・マジックに圧倒されたけれど、娘はピンとこなかったみたいで観終わった後の感想は「疲れた」。映画オタクの母はガクッ…(涙)