Wednesday, June 27, 2012

サマー・バレエ・プログラム


娘の通っている教室のサマー・プログラムが今週の月曜日から始まった。

娘やクラスメイトたちは、今度の9月から上より2番目のレベルに上げられることになり、夏の間もLevel Cという一番上のレベルに入れてもらえることになった。
この教室のサマープログラムには、毎年、他所の教室の生徒たちも参加する。いろいろな種類のダンスが学べて、その割りに受講料が安い(月~金の毎日4クラスほどあって、5週間で1500ドルだから1日あたり60ドル。時間に直すとほぼ10ドルだから、これはアメリカの私営のデイキャンプの中ではかなり安い方だと思う)のが魅力なのだと思う。最後には、学んだことを披露するスタジオでのミニ発表会もある。

娘は、このサマー・プログラムに一昨年から参加。一昨年と去年は1つ下のLevel B。ポアントを履き始める生徒たちが受講するレベルである。
Level Cになると、1日の受講時間が長くなり、おまけに半日ながら土曜日までクラスがある。
Level Cのクラスのうちわけは:

バレエ=月~土の毎日。1回1時間半
ポアント=月、水、金の週3回。1回1時間15分
ヴァリエーション=火、木の週2回。1回1時間15分
ジャズ=火、木の週2回。1回1時間
モダン=水、金の週2回。1回1時間
フラメンコ=月、火の週2回。1回1時間

その他に、インナーマッスルを鍛えるピラティスが月、水、木の週3回(1回1時間)、最後の発表会で踊る古典作品からの抜粋(今年は「ラ・バヤデール」らしい)の練習に充てられるバレエ・リハーサルのクラスが月、金の週2回(1回1時間15分)加わる。

こんなスケジュールで朝は9時半から夕方は早い日で3:45PM、遅い日は4:45PMなどというスケジュールだからさすがに疲れる様子。それでも、「やっぱりジャズ、楽しい~」とか、「今日のモダン、すんごく面白かった」とか報告してくれるのは嬉しい。
ちなみに、Level Cは、最初の1週間、ニューヨーク・シティ・バレエから招いた2人のプリンシパル、タイラー・ペックロバート・フェアチャイルドが、バレエやヴァリエーションを教えてくれることになっていて、「ロバートが見てくれた!」とか「タイラーが直しを入れてくれたんだよ!」なあんてことも言っておりました。アメリカでトップクラスのバレエ団の現役プリンシパル・ダンサーから指導を受けるなどという機会は滅多に無いわけで、そう考えるとラッキーだわ...

去年のスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)のLAワークショップでも、毎日、ポアントを履くことになったけど、今年は教室のプログラムでも毎日必ずポアントを履くのが判ったので、ポアントも2足新調。(カスタムメイドの綜芸のポアントシューズ3足は、5ヶ月で全て潰れました...)


今回は、これまでのロシアン・ポイント(日本ではRクラス)に加え、グリシコのウラノワ(写真左)を試しています。
教室のサマー・プログラム、そしてその後、引き続き受講するSABワークショップと、おそらく40時間以上履くことになるので、2足だけじゃもたないかもしれない...(ってことは、また100ドル近い出費ですわ。とほほ...)

Thursday, June 21, 2012

「チャイと兵隊と羊」


村上春樹の旅行エッセイ「遠い太鼓」は、えらく面白い旅行記で3度ぐらい読み返したが、彼のエッセイが読みたくなって、近場の図書館が属するLos Angeles County Libraryのサイトで検索をかけて出てきたのが、「チャイと兵隊と羊-21日間トルコ一週」という本だった。(本書はギリシア旅行を綴った「アトス-神のリアル・ワールド」と組で「雨天炎天」という2冊組の本になっているというのを後で知った。こっちも図書館のデータベースで検索してみよう。)

村上氏は写真家の村松映三氏と共に、トルコという国の外周をほぼ一周回る旅に出て、本書はその旅の記録なのだが、その土地土地の風俗・人々を観察して鋭い洞察、考察を加えたかと思えば、フェイントをかますかのような軽妙洒脱な描写が出てきたりして、楽しい。「遠い太鼓」もそうだったが、だいたい旅行というものからして、見知らぬ土地で思索に耽るような気持ちになることもあれば、バカな事をやってみたい気持ちになることもある行為なのだと思う。だから、きっと村上氏の旅行エッセイは自分も同行しているような気持ちに浸れることが多くて、読んでいて楽しいのだろう。

ただ、トルコ一周は、その長期滞在が「遠い太鼓」で綴られているギリシャやイタリアなどに比べて国の性格上、苦行を強いられる旅行だったこともあってか、憂鬱な気分になったことも多かったようで、「遠い太鼓」ほど可笑しいところが無いのがちょっと寂しかった。

それにしても、水を好むという金目銀目の白猫、ヴァン猫には一度で良いから会ってみたいものです。

Tuesday, June 19, 2012

Bunheads


ケーブル局ABCで始まったドラマ「Bunheads」の初回エピソードを観た。

「Bunheads」は、若いころ、アメリカのトップクラスのバレエ団アメリカン・バレエ・シアター(ABT)から奨学金をもらうほど優秀なバレリーナだったヒロインが、ブロードウェイ・ミュージカル出演をきっかけに、バレエの道からそれて、一時の気まぐれでラスベガスで上演されるミュージカルに出たのが運のつき。以来、本意ではないのにベガスでショーガールを続けているところから始まる。
ヒロインのミッシェルは、冷房もろくに利かないぼろアパートに住み、自分よりずっと才能は無いが、整形で巨乳になった若いダンサーの方がはるかに良い待遇を受けるベガスのショービジネスにうんざりしているところに、自分にずっと御執心だった中年男のファンのプロポーズを受け、衝動的に受けて電撃結婚。フィアンセの「海が見える素晴らしい眺めを持つ自宅」に着いてみたら、彼はなんとバレエスタジオを経営する元バレリーナの母親と同居していた...

というのが、初回の展開なので、あまりバレエシーンも出て来なかったのだが、ミッシェル役のサットン・フォスターはブロードウェイのミュージカルで2度もトニー賞を受賞した実力の持ち主なので、ドラマ部分もしっかりしているだろうから楽しめるのではないかと期待している。
ところで、そのミッシェルにからむ義母のバレエ教室の生徒が4人居るのだが、この主要キャストと目される4人のバレエ少女役のうち2人は明らかにバレエ体型だし、バレエをやっているという雰囲気であるのに対し、あとの2人には「う~~~~ん」と唸ってしまった。いえ、どんな体型の子がバレエ習ったって良いんだし、現実のバレエ教室だってバレエ体型の子たちばかりではないんですけどね、これでバレエ踊られるのは正直言ってちょっと苦しいかな...と。まあ、今後、もしかしたら、プロになりたい!と一念発起して、すんごくドラマチックに体型が変わってしまうという役なのかもしれないし(でも、それは無いかなあ...)、そういう体型だからこそ成り立つドラマがあるんだろうから、暖かく見守っていってあげることにしましょう。

番組予告編はこちら

Sunday, June 17, 2012

子供の発表会に御手伝い出演

娘の通っているバレエ教室では、先日の日記で書いた5月に行なわれる「Spring Performance(春公演)」と、12月に行なわれる「くるみ割り人形」と年に2回、劇場でのパフォーマンスの機会があります。
ただし、春公演に出演できるのは8歳以上の生徒たち。それより年下の子供たちは、6月下旬に行なわれるOn Stageという名の発表会に出ます。
4歳~8歳という年齢の子供たちだし、練習もクラス内で済ませるだけだから、振り付けを憶えていない子、舞台の上で固まってしまう子、音楽のタイミングに合わせられない子も続出。そこで、上級クラスの“お姉さんダンサー”たちが一緒に舞台に出て、列をリードしたり、前で見本になって踊ったり、動くタイミングをさりげなく教えたりと、“御手伝い出演”することになっています。
娘は、2009年に1度、お手伝いをしているのですが、今年も小さい子クラス担当の先生に頼まれて、御手伝い出演することに。

リハーサル中の写真。
娘、で、デカイ...

娘がリードしたのは、「Swan」という「白鳥の湖」の曲に合わせた演目。去年、上級クラスが踊った「白鳥の湖」第2場で浸かった衣装を拝借。頭にもちゃんと白鳥のヘッドピースを付けてもらいました。(でも、娘の頭には大きかったようで、ちょっとターバンみたいに見えない?)

On Stageは、地元サンタモニカの中学校の講堂を借り、衣装も照明も非常にベーシックな“普段着な”発表会だけど、小さな子供たちとその親にとっては晴れの舞台。中には舞い上がっちゃう子や逆にナーバスになってしまう子も居て、そういう子を優しくリードしてあげるのもお姉さんダンサーたちの役目だったりします。
小さい子が大好きな娘は、待機中に子供たちとオシャベリしたりするのも楽しかったようで。親鳥の役目は果たせたかな...?

裏切りのサーカス


遅ればせながらジョン・ル・カレのスパイ小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の映画化作品「裏切りのサーカス」をDVDで鑑賞。

スパイ小説を映画化した本作は、登場人物が多い上、イギリス英語をつぶやくように話す会話が多くて、途中、何度もプレイヤーを一時停止して、一緒に観ていたダンナに「今、何て言ったの?」と聴く羽目になったが、ダンナも「ん~、僕も解らなかった。もう1度プレイバックして」なんて言うことも多々あり。
それでも、後半、次第に謎が解き明かされていく過程はスリリングだったし、何より、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチら、英国俳優たちの視線1つ、唇の歪ませ方1つで、多くを語れるようなニュアンス豊かな演技が楽しめる作品だった。とかく騒々しくなりがちなアメリカ映画とは対照的な、青ざめた静けさをたたえた雰囲気も良い。

ちなみに、邦題にある「サーカス」とは、イギリス情報局秘密情報部(時代背景を70年代とする本作では軍情報部第6課)の通称。でも、日本でそんな事を知っているごく僅かだろうから、「裏切りのサーカス」というタイトルだけでスパイものと判るのは難しいんじゃないのかなあ...

Saturday, June 9, 2012

ボリショイ・バレエの「白鳥の湖」

写真はLos Angeles Timesのサイトから拝借しました。

ロサンゼルスに来ているボリショイ・バレエの「白鳥の湖」を観に行きました。
娘の通っているバレエ教室を通しての「学生割引」を利用したので、通常75ドルの席が35ドル(+8ドルの手数料)というオトクなチケット。♪

初日だったせいか、パフォーマンスの前にバレエ評論家による「白鳥の湖」やチャイコフスキーについての簡単なレクチャーがあって、開演時間より早めに着いたので、聴いてみたら、話し上手な人でなかなか面白かったです。
例えば、「白鳥の湖」は初演の際は、まずい振り付けだったこととダンサーたちが一流でなかったことが災いして、非常に評判が悪く、衣装がボロボロになった時点で上演を止めてしまったこと、チャイコフスキーはその後、「眠れる森の美女」の作曲を依頼され、それが大評判になってやっとバレエ音楽の作曲家として成功を収めたこと、そして、「白鳥の湖」はチャイコフスキー没後2年経ってから、名振付家マリウス・プティパが再発見して振り付けし直したことによって、復活、名作バレエの仲間入りを果たしたということ。ちょっと調べればわかる事なのだとは思うけれど、知っていて損はないトリビアをいろいろ聴くことができました。

さて、ボリショイの「白鳥の湖」ですが、何より一番感心したのは、コール・ド・バレエの見事さ。ロシアのバレエ団は、ボリショイにしてもキーロフにしても、一糸乱れぬコール・ドの美しさで有名ですが、それを自分の眼で生に実感できたのが嬉しかったですね。次々に変わる配列がどれもほぼ完璧。上げられる脚や腕の角度もほとんど同じ。まあ、これは身長がほぼ同じダンサーを何十人も揃えられる一流バレエ団の強みなのでしょうが、アメリカのバレエ団ではここまで徹底したコール・ドにはできないと思います。

逆に一番不満だったのは、主役のオデット/オディールかなあ...
写真はLos Angeles Timesのサイトから拝借しました。

私たちが行った回でオデット/オディールを踊ったのは、アンナ・ニクリーナ(↑写真)というダンサーだったのですが、パンフレットの解説では彼女は「Leading Soloist」となっていました。ソリストよりは上だけどプリンシパルではないといった位置づけなんですかね。金曜日の夜や土曜日の夜といった、客がたくさん集まる回の同役はプリンシパルのエカテリーナ・クリサノヴァというダンサーが踊ったようで... まあ、安いチケットなんだからしょうがないといえばしょうがないのですが、二クリーナさん、なんか存在感が足りない感じだったんですよ。悲劇のヒロインでピュアなオデットはともかく、王子を誘惑するオディールはいかにも役不足。コール・ドが見事なだけに、よけい影が薄くなっちゃって... 32回のフェッテも最後ふらついて、なんかごまかして終わってたし。アメリカ人観客は大喝采していたけど、娘と私は「最後、ヤバかったよね...」と囁き合ってしまいました。二クリーナさん、ピケターンとかはすごいスピードでくるくる回れるんだけど、ピルエット系の回転技が弱いという印象を受けました。それから腕の使い方もイマイチだったんですよね。「白鳥の湖」の振り付けでは、腕の動きがかなり大切なはずなんだけど。

でも、全体的には質が高いパフォーマンスだったと思います。それから、この「白鳥の湖」、「ブラック・スワン」での「白鳥の湖」同様、悲劇で終わるオリジナル版だったのですが、私が過去に観たのはいずれも最後、王子がロットバルトを破って人間に戻ったオデットと結ばれるハッピーエンド版だったので、悲劇版が観られたのも収穫でした。
娘にも大いに勉強になったようで、これからも予算が許す限り(苦笑)、なるべくプロのバレエ団の舞台を見せてあげたいなあ...と思ったのでした。

Friday, June 1, 2012

Breaking Pointe


「スーパーナチュラル」や「ゴシップ・ガール」といった若者向けのドラマを多く放映する局CWで、5月31日から始まったバレエ・ドキュメンタリー「Breaking Pointe」を観た。

「Breaking Pointe」は、ユタ州に在るバレエ団、バレエ・ウエストに在籍するバレリーナたちの日々を描く。初回のフォーカスは、作り手側が選んだ何人かの団員の来期の契約の更新をめぐるドラマ。或る団員は、コールドからドゥミソリストに昇格され、別の団員はプリンシパル狙いだったのに、3年目のソリストに据え置きになり、そして他の団員は契約打ち切りを告げられる。恋人同士だった団員たちは契約更新で明暗が分かれ、別の団員は恋人の団員と自分の気持ちがすれ違っていることに悩んでレッスン中、上の空になってしまう。

これがやらせじゃなかったら、バレエの世界って本当にドラマティックだわ~と思わせる。
ただ、初回を観た限りの感想を言えば、CWの若者向けドラマばりの私生活の恋愛のどーたらこーたらをもう少し割愛して、レッスン風景やリハーサル/公演の舞台裏をもっと見せて欲しかった。

あと、もう1つ気になったことは、細かい事だけど、バレエ・ウエストの女性団員たちのふくらはぎの太さ。中には細い人も居たようだけど、脚の筋肉のつきかたがバレリーナというよりは、ボディビルダーみたいな感じだったのが、ちょっと気になった。ま、それでも美しく踊れれば良いんだろうけど...

予告編はコチラ:


ところで「Breaking Pointe」というタイトルは巧い。
バレエを習っていてポアントシューズpointe shoesを履いている人、あるいはそういうダンサーが周囲に居る人は周知のことだが、ポアントは買ってきてすぐにパッと履けるものではなく、自分の足裏のカーブに合わせて靴底を曲げねばならない。そうやってポアントを自分の足に慣らしていくことをbreaking pointeと呼ぶ。
一方、英語のイディオム、breaking point(英語ではe無し)は、「限界点」という意味。
常に限界点に立たされているような気持ちで生きているバレリーナたちの生活を描くドキュメンタリーとしては、非常に的を得たタイトルだと思う。