Sunday, October 7, 2018

「華氏119」



マイケル・ムーアの新作「華氏119」を観た。

タイトルの数字、119とは、2016年11月8日の大統領選挙の翌日を表す数字で、トランプが大統領になってからのアメリカ社会・政治を描いている。
「華氏119」は、まず大統領選で大方の予想を裏切ってトランプが大統領になってしまったところから始まる。"How the f*ck did this happen?(なんでこんな事になっちまったんだ?)」というムーア自身の言葉がそれにかぶさるが、その時のアメリカ国民、少なくとも、トランプを支持しなかった国民の半数以上の気持ちをこれ以上端的に表す言葉は無いだろう。
映画は、そこから、ムーアの故郷、ミシガン州フリントの汚染水危機と街の荒廃ぶり、ウエストヴァージニア州の公立学校の教師たちが置かれている窮状、そして17人の犠牲者を出したフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校乱射事件をとり上げ、それぞれの状況から生き残ろうと闘う人々を描くと共に、その原因を作り出したアメリカ社会のシステムやその「仕掛け人」である政治家たちの欺瞞を暴いていく。さらに、そのような問題に国民が何もしないでいたらどのような結果になるかを、1930年代のナチスドイツの台頭という過去の黒歴史と重ねて警告する。

ムーアはアメリカの映画監督の中では異色の存在である。政治的スタンスではリベラルに当たるのだろうが、民主党の政治家たちのために華やかにファンドレイジングをするハリウッドのエリート・セレブたちとは一線を画し、常に庶民の視線でものを見る事を目指す。「華氏119」でも、リベラルVS保守、民主党VS共和党という観点ではなく、あくまでも執政者としての政治家たちがアメリカ国民に対して何をしてきたか、という事に着目した姿勢を一貫させている。

民主主義は、あくまで民が主となる政治体制でなければならないはずなのに、民主主義を世界中に説く建前を取ってきたアメリカの民主主義が確実に崩壊に向かっている。アメリカに住みながら参政権を持たない外国人居住者の私にとっては、もどかしい思いでいっぱいになりながらエンディング・クレジットを見つめるばかりだった。