Sunday, October 26, 2014
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
ブログに書くのが遅くなってしまったけれど、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の試写を観た。
タイトルにある「バードマン」とは、リガン・トムソン(マイケル・キートン)が代表作であるスーパーヒーローものの主役の名前。
リガンがバードマンとしてハリウッドで人気を博したのも、とっくの昔の過去の栄光。今ではハゲで腹も出たオッサンなのに、いまだに街で呼び止められるのは「バードマン」ゆえというのが寂しい限り。
そんなリガンが演技派俳優としてカムバックを狙って最後のチャンスを賭けているのは、ブロードウェイ劇「What We Talk About When We Talk About Love」。レイモンド・カーヴァーの小説「愛について語るときに我々の語ること」を元に自ら戯曲を書き、演出、主演も務めるドリーム・プロジェクトである。
ところが、リハーサル中に重要な役を演じる俳優がケガを負って降板。共演女優レスリー(ナオミ・ワッツ)の薦めで、人気俳優のマイク・シャイナー(エドワード・ノートン)が代役を演じてくれることになって、一同、大喜びするが...
「バードマン」は、ひとことで言えば、ブロードウェイの演劇界の裏幕ものの映画で、そういう意味ではウディ・アレンの「ブロードウェイと銃弾」に近いとも言えるが、そこは、「バベル」のアレハンドロ・イニャリトゥの作品だから、「そう来るか〜」という展開やら、「そう言うか〜」という台詞やらが満載。なんだか、ウサギが消えて行った穴にアリスと一緒に落っこちていくようなスリルと非現実感をおぼえる不思議な魅力でいっぱいの作品になっている。
そんな経験を実現させるのに大いに貢献しているのは、「ゼロ・グラビティ」で撮影賞オスカーを獲ったエマニュエル・ルベツキの撮影。一見、全編通してワンテイクで撮ったかのような流れるようなカメラワークがとにかく素晴らしい。ルベツキ氏は、娘が御嬢さんとバレエ教室でずっと一緒だったのに一昨年、「他のダンスがやってみたい」とのことで辞めたのが残念。御嬢さんがまだバレエを続けていたら、公演後のパーティとかで是非つかまえて「『バードマン』の撮影はどうやったんですかっ?」とか聞けたのに〜〜〜
それから、マイケル・キートンの演技も素晴らしかった。彼には、「バットマン」を演じたという過去もあったりするのが興味深いわけだけれど、「この人、こんなに上手かったっけ??」とビックリするぐらい、この映画のキートンは良かった。オスカー・ノミネートは必至でしょう。
Wednesday, October 15, 2014
「くるみ割り人形」リハーサル真っ最中
「雪の精」の群舞の練習風景
写真はトッド・レクティック氏のサイトから拝借しました
今年も、娘のバレエスタジオ恒例の「くるみ割り人形」のリハーサルが9月の初めから始まりました。
今年も、去年と同じ、サンタモニカのブロード・ステージが会場ですが、去年が1週末4公演だったのに対し、今年は2週末8公演。その他にもサンタモニカ学校区の小学生を招いた短縮版をそれぞれの金曜日に踊るし、照明や立ち位置を確認するテックリハーサルやドレス・リハーサルも含めると10回以上、踊ることになります。踊る機会が増えたのは嬉しいけれど、その分、子供も親も大変〜〜。
肝腎のキャスティングですが、まだまだ「トレーニングの最中だから」という理由で、誰がどの踊りをどの日のどの回で踊るのか、ということは全く未定。
娘は、とりあえず、「雪の精」の群舞、「リード・エンジェル」(第2幕のプロローグ)、「スペインの踊り」、「葦笛の踊り」、そして「花のワルツ」の群舞のリーダー的存在である「デミ・フラワー」の5つのリハーサルに出ています。「雪」、「エンジェル」、「スペイン」、「葦笛」は去年も踊らせてもらったので、よほどのヘマをしない限り、今年も踊らせてもらえるだろうし、「デミ・フラワー」は他に成り手があまり居なさそうだとのことなので、少なくとも1〜2回は踊らせてもらえるのではないか、というのが私たちの「読み」ですが、どうなるかな...?
「セッション」
今年のサンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した「セッション」(原題:「Whiplash」)という映画を試写で観た。
「セッション」の主人公アンドリューは、プロのドラマーを目指して「ニューヨーク一の、つまりは世界一の」音楽大学に入学。練習室でドラムを叩いているところを、大学随一のジャズバンドを率いる教師フレッチャーに眼を留められ、バンドの練習に参加するよう誘われる。新入生なのにトップバンドのリーダーに誘われて意気揚々と練習に参加したアンドリューを待っていたのは、虐待に限りなく近いフレッチャーのスパルタ指導だった...
上にも書いたように、この映画の主人公はアンドリューで、演じるマイルズ・テラーは迫真の演技を見せているが(ドラムも短期集中で特訓したらしく、その成果は見事にスクリーンに反映されている)、それを喰ってしまう勢いの凄絶な演技を見せるのはフレッチャー役のJ・K・シモンズ。サム・ライミの「スパイダーマン」シリーズの新聞社の編集長ジェイムソンや「JUNO/ジュノ」のヒロインの父親役などで知られている俳優だが、警官やFBIの捜査官からドクター、囚人までと広い幅の役をこなし、出演作もシリアスな人間ドラマからサスペンス・スリラー、コメディと首尾範囲も大きい。
スパルタ教師タイプは、これまでも何度となく映画に登場してきたが、コメディでは揶揄されっぱなしで終わり、シリアスな作品だと、たいがい最後には主人公と「心を通わせる」という「感動的」な展開になるのがほとんど。「セッション」も、ある時点でそうなるかと思わせる部分があったのだが、嬉しいことに見事にそれを裏切ってくれる。
監督のデミアン・チャゼルは29歳。若いからこそのエネルギーに満ちた力作だと思う。
ちなみに、フレッチャーが言う「英語には『good job』という2語ほど有害な言葉は無い」という台詞には、思わずニヤリとしてしまった。
アメリカ人の教師も親も、本当に不必要なほど「good job」という言葉を頻繁に口にする。根拠の無い褒め言葉ほど子供をダメにするものはない、という点については、フレッチャーに大いに共感したのでした。
Tuesday, October 7, 2014
「海外ドラマTVガイドWATCH」に記事を書きました
東京ニュース通信社から出されている「海外ドラマTVガイドWATCH」に寄稿しました。
ドラマ2本だけ、ページにすると2ページだけの執筆でしたが、いずれも好きで気を入れて観ていたドラマだったので楽しい御仕事でした。
昨日、掲載誌が送られてきましたが、日本で観られる海外ドラマが数多く紹介されていて、アメリカで話題になっているドラマは集中特集されているし、アメリカの人気ドラマ5本のパイロット・エピソードを収録したDVDまで付録についているしで、海外ドラマ好きにだったら買って損は無い雑誌だと思います。
Sunday, October 5, 2014
TVドラマ、秋の新シーズン開始
9月に学校が新学年を迎えるアメリカでは、TVドラマも9月が新シーズン開始時。
ということで、今年も新しいTVドラマを観始めました。
まず、最初にチェックを入れたのはCBSの「Scorpion(スコーピオン)」。
「スコーピオン」は、天才ハッカー、ウォルター(エリス・ガベル:写真左から2人目)と、天才統計学者シルヴェスター(アリ・スタイダム:写真中央)、天才行動学者トビー(エディ・ケイ・トーマス:写真左端)、それに天才機械工学者ハッピー・クィン(ジェイディン・ウォング:写真右端)という天才集団が、アメリカ合衆国国土安全保障省の特別捜査官ギャロ(ロバート・パトリック:写真右から2人目)が持ち込む難事件を解決していくという設定の1話完結型ドラマ。
主役のウォルターを演じるガベル(「ワールド・ウォーZ」でゾンビに効く薬の開発の鍵を握っていそうなくせに、あっけなく死んでしまうドクターを演じていた)が、個人的に全然カッコいい、あるいはキュートだと思えないのが、ちょっとツライが、アクション・シーンなどはなかなか良く出来ているので、楽しんで観ています。
次に観始めたのはFOXの「Gotham(ゴッサム)」。
読んで名のごとく、「バットマン」のブルース・ウェインがバットマンになる前のゴッサムを舞台にしたドラマ。まだパイロット・エピソードを観ただけなので、どのようなストーリーが展開していくのかはわからないのだけれど、主役にあたるジェームズ・ゴードン(「OC」のベン・マッケンジー)や、少年時代のブルース・ウェイン(「TOUCH/タッチ」のジェイクことデヴィッド・マズーズ)、ブルースの保護者的存在になる執事のアルフレッド(「エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY」のレストレードを演じていたショーン・パートウィー)、後のキャットウーマンになるセリーナや、ペンギンになるオズワルド・コブルポットなどが登場する。
全体的に暗めのトーンは、いかにも「バットマン」的世界で、未来と過去が混在しているようなプロダクション・デザインがナイス。
もう1本、録画だけは済ませてあるけれど未見なのは、ヴィオラ・デイヴィスが弁護士で法律学の大学教授でもあるヒロインを演じる「How To Get Away With Murder(殺人罪を逃れる法)」。観たら、改めて感想を書くつもり。
上記の3本は、今シーズン開始のドラマの中で、評判、視聴率とも高いドラマとして挙げられているので、今後の展開の面白さも期待できそう。
この3本に加え、引き続き見ているのは、ジェームズ・スペイダー主演の「ブラックリスト」、「アベンジャーズ」などにも登場したエージェント・コルソンを主役にした「エージェント・オブ・シールド」、「パーソン・オブ・インタレスト」、2000年の放映開始時からずっと見続けている「CSI」など。
夏の間に始まったHBOの哲学的なセミファンタジー・サスペンス・ドラマ「LEFTOVERS/残された世界」や、シーズン2に入った「レイ・ドノバン」の録画分もまだ数本残っているので、そちらも消化しなくてはならないから、毎日、せっせと見ています。
ということで、今年も新しいTVドラマを観始めました。
まず、最初にチェックを入れたのはCBSの「Scorpion(スコーピオン)」。
「スコーピオン」は、天才ハッカー、ウォルター(エリス・ガベル:写真左から2人目)と、天才統計学者シルヴェスター(アリ・スタイダム:写真中央)、天才行動学者トビー(エディ・ケイ・トーマス:写真左端)、それに天才機械工学者ハッピー・クィン(ジェイディン・ウォング:写真右端)という天才集団が、アメリカ合衆国国土安全保障省の特別捜査官ギャロ(ロバート・パトリック:写真右から2人目)が持ち込む難事件を解決していくという設定の1話完結型ドラマ。
主役のウォルターを演じるガベル(「ワールド・ウォーZ」でゾンビに効く薬の開発の鍵を握っていそうなくせに、あっけなく死んでしまうドクターを演じていた)が、個人的に全然カッコいい、あるいはキュートだと思えないのが、ちょっとツライが、アクション・シーンなどはなかなか良く出来ているので、楽しんで観ています。
次に観始めたのはFOXの「Gotham(ゴッサム)」。
読んで名のごとく、「バットマン」のブルース・ウェインがバットマンになる前のゴッサムを舞台にしたドラマ。まだパイロット・エピソードを観ただけなので、どのようなストーリーが展開していくのかはわからないのだけれど、主役にあたるジェームズ・ゴードン(「OC」のベン・マッケンジー)や、少年時代のブルース・ウェイン(「TOUCH/タッチ」のジェイクことデヴィッド・マズーズ)、ブルースの保護者的存在になる執事のアルフレッド(「エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY」のレストレードを演じていたショーン・パートウィー)、後のキャットウーマンになるセリーナや、ペンギンになるオズワルド・コブルポットなどが登場する。
全体的に暗めのトーンは、いかにも「バットマン」的世界で、未来と過去が混在しているようなプロダクション・デザインがナイス。
もう1本、録画だけは済ませてあるけれど未見なのは、ヴィオラ・デイヴィスが弁護士で法律学の大学教授でもあるヒロインを演じる「How To Get Away With Murder(殺人罪を逃れる法)」。観たら、改めて感想を書くつもり。
上記の3本は、今シーズン開始のドラマの中で、評判、視聴率とも高いドラマとして挙げられているので、今後の展開の面白さも期待できそう。
この3本に加え、引き続き見ているのは、ジェームズ・スペイダー主演の「ブラックリスト」、「アベンジャーズ」などにも登場したエージェント・コルソンを主役にした「エージェント・オブ・シールド」、「パーソン・オブ・インタレスト」、2000年の放映開始時からずっと見続けている「CSI」など。
夏の間に始まったHBOの哲学的なセミファンタジー・サスペンス・ドラマ「LEFTOVERS/残された世界」や、シーズン2に入った「レイ・ドノバン」の録画分もまだ数本残っているので、そちらも消化しなくてはならないから、毎日、せっせと見ています。
Friday, October 3, 2014
「ゴーン・ガール」
女流サスペンス小説作家、ジリアン・フリンのベストセラー小説「ゴーン・ガール」をデヴィッド・フィンチャーが同名映画化した作品を試写で観た。
「ゴーン・ガール」の主人公はニック。ニューヨークでライター業をしていたが、不況で解雇され、なかなか職が見つからずにいたところ、母がガンになったという知らせを受けて、妻のエイミーと故郷のミズーリに帰って来る。
エイミーも雑誌のコラムニストをしていたが、両親が彼女をモデルにした児童書シリーズ「アメイジング・エイミー」というベストセラーを書いていたため、ちょっとしたセレブリティ的な身分だった。根っからのニューヨーカーであるエイミーは、ミズーリの田舎町の生活に慣れずにいたが、結婚記念日に謎の失踪を遂げる...
「ゴーン・ガール」の原作は、ニックの視点で書かれた部分と、エイミーの書いた日記の部分という2つの「声」で語られていくスタイルを取っており、映画化するにあたっては、中盤まで真相を露呈させることなく映像化させることが難題の1つだったに違いないが、映画の脚本執筆に初挑戦した原作者のフリンは、その点、非常に良い仕事をしたと思う。
得意なサスペンス・スリラー・ジャンルだけあって、フィンチャーの演出も申し分無い。安っぽい三流サスペンス映画の定石となるような、嫌らしいサプライズを仕掛けること無しに、観客をハラハラドキドキさせる手腕はさすが。
キャスティングのチョイスも良かった。主役の2人を演じるベン・アフレックとロザムンド・パイクは、原作を読んだ際に私が想像していたニックとエイミーとはイメージがちょっと違うので、最初は少し違和感があったが、じきに慣れた。特にパイクのエイミーは素晴らしかった。西洋人にしてはあっさり顏なのだが、一見特徴無く見える眼がここぞという時に発揮する目力が凄かった。
ただ、原作の読後感もそうだったけれど、観た後、決してスッキリする映画ではありません。
とりわけ、女性不信におちいっている男性は避けた方が良い映画だし、デートにも向かない映画でしょう。
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