Friday, December 19, 2008

「くるみ割人形」漬けの12月

      《キーロフ版「くるみ割人形」のクララ》

子供のバレエ団の「くるみ割人形」は、先週末に2回目の公演が終わったけれど、昨日は子供の学校の見学として、ダウンタウンのミュージック・センターでロシアのキーロフ・バレエの「くるみ割人形」鑑賞に出かけた。
この見学、もちろん子供たちだけのものなのだけれど、chaperoneという子供のお守り役で何人か親が付き添うことになっていて、私はチャッカリ立候補して同行した次第。(ラッキー♪)

キーロフ・バレエは、山岸涼子の漫画「アラベスク」にも登場する、ロシアではボリショイと並ぶ名門バレエ団。その「くるみ割人形」ということで期待は最大級…だったんだけれど、意外にも観てきた感想は…「ウチの子供たちのバレエ団バージョンで充分でしょう」でした。その理由としては…

1.ACTが3つに分かれている
私が過去に観た「くるみ割人形」は、全て2幕構成だった。すなわち、冒頭のパーティ・シーン→くるみ割人形+兵隊チームVSネズミの戦い→雪の精の踊りがACT 1、クララとプリンスが御菓子の国に着いて、各国の踊りを観るのがACT 2というように。ところがキーロフ版は、パーティ・シーンと、それ以降の戦いのシーン+雪の踊りのシーンが分かれて、全体が3部構成になっていた。これだと、パーティ・シーンとネズミとの戦いのシーンが完璧に分かれて話の流れが途切れてしまって良くなかった。休憩だって2度も必要無いし。

2.振り付けがちょっと…
名門キーロフとなれば、アメリカのバレエ団の共通する悩みである男性舞踊手不足も無いということなのか、男性ダンサーがふんだんに出てきた。それはそれで素晴らしい。特に、ネズミの役なんかは、男性舞踊手でなければ実現しないダイナミックな動きが出されていて良かった。ただし、最後の方のグラン・パドドゥで、シュガープラム・フェアリーをサポートするのが、彼女の相手役だけじゃなくて、花のワルツの男性ダンサーまで動員しての振り付けはやり過ぎに思えた。何でも出せば良いというものじゃないでしょう。
あと、パーティのシーンの人形の踊りの振り付けが意外なぐらい凡庸だった。道化人形、女の子の人形、黒人人形なんて3人も登場させるから、1人1人の踊りも短くなって見せ場が作りにくかったし。(しかも、そのうちの道化人形がACT 2の戦いのシーンに登場するのは不可解)

3.セクシーじゃないアラビアの踊りなんて…
これまで私が観てきたアラビアの踊りは、アラビアン・ナイトちっくな(つまりオヘソが見えた)衣装を着た男性と女性のデュオのアクロバティックでセクシーな踊りだった。それが、チャイコフスキーなりの異国情緒を出したミステリアスなメロディに合っていた。ところが、キーロフ・バージョンは、中近東系の人たちがたくさん住んでいるウエストウッドあたりを歩いていそうなイスラム女性が着るような全身を包んだバギーな衣装を着た、つまり中東のオバちゃんみたいな女性が5人出てきて、ベリーダンスのバリエーションみたいな踊りを踊るだけ。女性の私が観てもつまらなかったよ。(ちなみに、キーロフのプログラムによると、この踊りは「アラビアの踊り」ではなくて「Eastern Dance(東洋の踊り)」になっている。)

4.プロならキチンと並びましょう
この見学は、3年生の親の1人が積極的に芸術教育等に対する補助金を獲得してくれて実現したものゆえ、私たちの席は最上階のバルコニー。だからダンサーたちのサイズはかなり小さかったので、ダンサーの表情とかはあまりよく見えなかったのだけれど、逆に上から観ている分、彼らの並び具合がよくわかった。踊っている際に、列を真っ直ぐさせたり、間隔を均等にとるのは意外に難しい。それは解っているのだが、2人~4人で踊っている時の列の乱れや間隔の不均等、センターのズレなどがかなり気になった。ウチの子供のバレエ団でもそれは同様の問題ではあるのだけれど、世界中をツアーして周るプロのバレエ団キーロフなんだから、もうちょっとビシッと整列して欲しかった。

あと、細かいことを言えば、衣装(前述のアラビアの踊り。あと、ロシアの踊りも衣装がヘビーすぎて体の動きがよく分からなかった。それから、中国の踊りの衣装が黒と白で牛みたいだった。中国だったらやっぱり赤と金とかじゃないと…)、スペイン、アラビア、ロシアの各ダンスで女性舞踊手がトゥシューズを履かずに踊っていた、といった点が不満に思えた。

逆に良かったのは、やはり男性・女性のソロのダンス。技術的にも表現的にも素晴らしい。技術に自信があるから、その余裕が舞台にも出ていて安心して観られる。「雪の精の踊り」、そして「花のワルツ」の2つの群舞も素晴らしかった。1人1人のダンサーのレベルが非常に高いし、キレイに揃っていたし。

もちろん、舞台装置も素晴らしい。なんと言っても、キーロフにはロシア政府の援助もあって、御金はふんだんにかけられるからね。

でも、その御金について言えば、キーロフは、チケット代が$30~$120(+約$8の手数料)という値段。一流どころのバレエ団の公演なんだから、それぐらいの値段は当然かもしれない。ただ、30ドルの最低価格のチケットだと全てバルコニー。舞台全体が、家庭用の大型TVスクリーンぐらいのサイズになって、正直言って臨場感はあまり無い。
それだったら、全席$25のウチの子供のバレエ団の公演の方がずっとオトク感があると思った。

1人1人のダンサーのレベルは、当然ながらキーロフにはかないっこない。舞台装置だってシンプルだ。しかし、バレエのテクニックに精通していない子供たち、「くるみ割人形」の御話を子供にバレエで観させてやりたいと思う親たちといった観客には、充分、楽しんでもらえるだけのクオリティは保証できる。

でも、今回の鑑賞は、親の私にとって非常に良い勉強になった。来年以降も、もし予算が許せば、自分たちのバレエ団以外の「くるみ割人形」も鑑賞してみたいと思う。



                  《こちらは我が子供のバレエ団。Best buyです》

追記:ところで、先週末のロサンゼルス・タイムズ紙に、各バレエ団の「くるみ割人形」の比較記事が出ていた。ウチの子供のバレエ団も言及されていて、ちょっと嬉しかった♪

Monday, December 15, 2008

YES MAN


今夕、試写で ジム・キャリーの新作「Yes Man」を観た。

「Yes Man」は、キャリー演じる自己中心的で自分の殻に閉じこもりがちな主人公が、自己啓発セミナーに行って、ほとんど教祖みたいな主宰者(テレンス・スタンプ)に半ば強制的に「Yes」としか言わないと約束させられ、何を聞かれても「Yes」としか言わないことにした途端、何も起きない平凡で退屈な彼の人生に次々と変化が訪れる、という話。

この映画の粗筋を最初に読んだ時、「ライアーライアー」みたいな作品なのかと思っていた。でも、観てみたら、確かにジム・キャリーらしいコメディではあるけれど、そこに「エターナル・サンシャイン」(個人的にキャリーのベスト&恋愛映画のベスト5に入る作品だと思っている)に通じるような切ない恋心なんかも織り交ぜられていて、意外に良かった。
これはキャリーの演技に負うところが大きいように思う。昔は、「マスク」や「エース・ベンチュラ」のようなとにかくハチャメチャなコメディを演じているだけの人だった(まあ、それはそれで面白かったけど)のが、「マン・オン・ザ・ムーン」や前述の「エターナル・サンシャイン」といった非コメディに挑戦して、役者としてより細かいニュアンスを出す演技を会得したのかもしれない。
キャリーって、顔の柔軟さを活かしたコメディだけじゃなくて、キチンとしたドラマもこなせる、なかなか良い役者なんだと思う。アカデミーとかも、早くこの人の良さを理解してあげるべきだ。

Tuesday, December 9, 2008

WATCHMEN


昨日は、グラフィック・ノベル「Watchmen」を「300」のザック・スナイダー監督が映画化した同名作品のロングリード・ジャンケット取材に行った。

“ロングリード”というのは、語源はよく分からないのだけれど、映画が完成する前に映像クリップなどを見せてもらってインタビューする“先取り取材”みたいな仕事を指す。なにしろ肝心の映画を観ていないので、質問を考えるのが難しい場合もあったりするが、今回のクリップは結構、見応えがあったので、インタビューする方も、いろいろな質問が出来たと思う。

キャストは、パトリック・ウィルソン、ビリー・クラダップ、ジャッキー・アール・ヘイリー等と、地味めだけれど、スーパーヒーローものは、俳優に個性とかカリスマがあり過ぎると(特に、「Watchmen」みたいにスーパーヒーローが複数出てくる時は)キャラがくど過ぎる印象を与えることもあったりするので(ウィル・スミスの「ハンコック」なんて、ちょっとそう思った)、的確なキャスティングだと思う。

インタビューでは、まだ撮影の余韻が残っているのか、皆、饒舌でジョークやF-wordsなんかも飛ばしまくりで、聞いているだけでも楽しかった。

Wednesday, December 3, 2008

Thanksgiving

例年だとThanksgiving、すなわち感謝祭の4連休は、前日の水曜日にLAから義妹の住むサンフランシスコ郊外のPetalumaに行き、木曜日は感謝祭の午餐、金曜日~日曜日は、義妹一家と過ごすのが習慣になっていたのだが、今年は、感謝祭の週末に、子供がバレエ学校の「くるみ割人形」に初出演するため、LAに留まらねばならなかった。
自分のところでは、感謝祭の午餐に客人を招待する暇も手間も費やせない私たちを救ってくれたのは、友人夫婦。彼女たちの親戚・友人を招いた午餐に招待してくれました。


彼女の家は1ベッドルームの小さなコテージなので、前庭にテントを張り、彼女が生業としているインドの輸入品で埋め尽くされたゴージャスな臨時ダイニングルームを作っての午餐。料理上手な彼女の料理も絶品で、幸せ~~~な気持ちになった夕でした。

翌日は、マリブにあるペッパーダイン大学内の劇場でのリハーサル。先生の指導にも熱が入ります。



その翌日、翌々日の土曜日、日曜日が本番の公演。初出演の我が娘は、ちょろっと出て後ろの方で踊ってすぐ引っ込んでしまう端役中の端役でしたが、プロ&セミプロのダンサーたちに囲まれて踊る経験はすごく楽しかったみたいで、「来年も絶対出る!」と宣言していました。ということは、来年も感謝祭はLAに足止めってことか…ゴメンよ、義妹…


娘は出ていないけど、ACT Iの最初のパーティ・シーンはこんな感じ。(撮影したのはドレス・リハーサル中だけど)この写真では判りづらいけれど、女の子たちの衣装はヴィクトリア時代風ですごく可愛い。

公演は12月の中旬にももう1度、今度はブレントウッドの劇場が会場になります。