Monday, March 26, 2012

署名に御協力御願いいたします!

ミクシィにも書いたのですが…

アメリカの学校でのいじめを描いた「Bully」というドキュメンタリーがもうすぐ公開されますが、アメリカ映画協会(MPAA)が、18歳未満の青少年には成人の付き添いが必要というR指定を付けています。理由は、F-wordと呼ばれる罵り言葉が数回出てくるから。でも、この罵り言葉はいじめている生徒がいじめられている生徒に浴びせかけている言葉であり、実際にこういう言葉で罵られているという事実をそのまま見せるために登場しているとのこと。
R指定だと学校でも上映会は出来ません。子供たちにこそ見せたい映画「Bully」を、高校生なら自分たちだけでも観に行けるPG-13にするようMPAAに嘆願する署名運動が実施されていて、私も今署名してきました。
アメリカで大きな問題になっているいじめの現実を伝える「Bully」を、子供たちが観られるよう書名に御協力を御願いいたします!

http://www.change.org/petitions/mpaa-don-t-let-the-bullies-win-give-bully-a-pg-13-instead-of-an-r-rating

エレン・デジュネレスもこの署名に協力を呼びかけています:


「Bully」予告編:

この予告編に登場する両親の息子さんは学校でのいじめを苦に自殺したそうです。わずか11歳の若さで。

言うまでもないことですが、「Bully」が公開されたら、同じくR指定を付けられたアカデミー賞受賞作品「英国王のスピーチ」同様、娘を同伴して観に行くつもりです。

Tuesday, March 20, 2012

THE HELP ヘルプ



今年のアカデミー賞でオクタヴィア・スペンサーが助演女優賞を受賞した「THE HELP」=邦題「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」(日本では3月31日に公開予定)を遅ればせながらDVDで観た。

「ヘルプ」は、露骨な黒人差別がまかり通っている1960年代の南部が舞台。大学卒業後、生まれ故郷のミシシッピー州ジャクソンで地元紙のコラムを書くことになったヒロイン、スキーター(エマ・ストーン)が、白人家庭に雇われている黒人メイド(タイトルのhelpは家政婦の意)たちが理不尽な扱いを受けるのを見て、彼女たちの声を聞き書きするプロジェクトを思いついて実行するというストーリーを中心に、エイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)とミニー(スペンサー)ら黒人メイドたちと、ヒリー(ブライス・ダラス・ハワード)やシーリア(ジェシカ・チャステイン)ら白人女性の雇用主たちとの関係を描いている。

スペンサーのミニーは、「風とともに去りぬ」のマミーのアンチテーゼのようなキャラ。演じるスペンサーは確かにアカデミー賞を受賞するに値する巧い演技ではあったが、私には地味ながらニュアンス豊かな演技を披露していたヴィオラ・デイヴィスの方が印象に強く残った。実際、授賞式前の下馬評では、デイヴィスが主演女優賞の最有力候補だったのに、ふたを開けてみたら、オスカーは3度目の正直でメリル・ストリープに行ってしまった。デイヴィスも、すごく残念だったと思う。
↓ エイビリーン役のデイヴィス


「ヘルプ」という作品自体は、一言で言うと、いかにもメイド・イン・ハリウッドの映画。善玉・悪玉がハッキリと分かれていて、ヒーロー(この場合はヒロイン)はあくまでも英雄的で、悪役はあくまで憎たらしい。泣かせどころも笑わせどころも、しっかり用意されていて、エンディングもあくまでアップビート。アメリカでヒットしたのも大いに納得の映画だった。
ちょっとひねくれた映画ファンの私としては、ハワードの憎まれ役にもう少し人間らしさが欲しかったし、黒人メイドたちの中にも、もう少し狡猾さを持つキャラを登場させて欲しかった。スキーターと黒人メイドたちの連帯もあまりにスムーズで、ちょっと御都合主義的なにおいがしなかったでもない。要は、あまりに「ひねり」が無さ過ぎて物足りなかったのでありました。

Saturday, March 17, 2012

「シャイニング」回顧

ひょんなことで1976年製作のイタリアのアニメーション映画「ネオ・ファンタジア」の存在を知り、DVDをレンタルして観たのだが、そのうちのセグメントの1つ「悲しいワルツ」を観た時に、「あれ???この曲、どこかで聴いたことがある…」とピーンときた。

「悲しいワルツ」のセグメント↓ 物静かですごく悲しいセグメントです。下手な反戦映画よりずっとパワフル。


一緒に観ていた家族の迷惑も顧みず(ゴメンよ)、「うーーーーん…」と唸り続けたこと数分、「あっ!!!」と稲光のような閃きが!!(オオゲサだってば-笑)
あれは今から30年以上前の、1980年の暮れのことでした。スタンリー・キューブリックの新作「シャイニング」の公開を間近にして、11PMが故今野雄二を招いて「シャイニング」を紹介すると共にキューブリックの娘、ヴィヴィアン・キューブリックの作ったメイキング・オブ・「シャイニング」のドキュメンタリーの一部を紹介していたのですが、確かその中で使われていたような…
でも、何せ今から30年も昔のことなので、定かではなく…
うーん、このドキュメンタリー、DVDが出ていないかなあ…と調べたら、ありました!!特典映像が付いた2枚組DVDの「シャイニング」が!アマゾンでチェックしたら、ちゃーんとヴィヴィアン・キューブリックのドキュメンタリーも含まれているではありませんか~!
しかも、地元の図書館で借りられるではありませんか~!

ということで、首尾良く入手して観ました。30分ちょっとのドキュメンタリーだったんだけど、最後の方でちゃんと「悲しいワルツ」が出てきました。原曲はシベリウス作曲だけど、娘キューブリックが使ったのは、「シャイニング」の音楽を担当したウェンディ・カルロス・バージョン。ゴーストストーリーにぴったりのアレンジメントになっています。
ヴィヴィアン・キューブリックのドキュメンタリーはYouTubeで観られます。↓
PART 1

PART 2

PART 3

PART4


このDVDの2枚目には他に、オーバールック・ホテルをどうやって映像化したかというドキュメンタリー映像や、キューブリックについてスピルバーグやシドニー・ルメットなんかが語る映像なんかもあって、結局、全部観てしまいました。
そうすると、キューブリック・ファンとしては、当然、映画本編も観たくなっちゃうわけで…
ということで、今夜は「シャイニング」を31年ぶりに観ることにしました。「シャイニング」は、いっとき主役のジャック・トーランス役の候補になったというロバート・デ・ニーロに悪夢をもたらせたという映画なので、今夜は寝るのがちょっと怖くなりそうだけどね…

Saturday, March 10, 2012

本が出ました:Sweet Monroe

「この映画がすごい!」で御世話になっていた宝島社さんから、「マリリン・モンローについての本を出すので文章を御願いできませんか?」と御相談いただき、父がモンローの大ファンであるということもあって喜んでお引き受けしました。
その時は、たぶんムックのような形で、私は文章を担当する何人かの1人だと思っていたら、こんなに可愛らしい本が出版されました。

しかも、文章を書かせていただいたのは私一人だったので、アマゾンなどで見ると、著者のところに私の名前が載っていてビックリするやら嬉しくなっちゃうやら。
この「Sweet Monroe」、映画ファンの私でも見たことの無い写真がふんだんに載っているとっても贅沢な本です。ピンクの可愛らしい装丁なので、ホワイトデーのプレゼントなどにもピッタリかも~~~?
と、さりげなく宣伝してみたりする…(笑)

INSIDE JOB インサイド・ジョブ



遅まきながら2011年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー受賞作「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」をDVDで観た。
私は、経済のことなど全くわからないし、市場とか株価とかの話もちんぷんかんぷん。だから、このドキュメンタリーは敷居が高くて今まで観ていなかったというところがある。DVDを観る際にも、まがりなりにもMBAを持っている配偶者に「解らなくなっちゃったら質問攻めにするからよろしくね~」とあらかじめことわっておいた。

「インサイド・ジョブ」は、2008年に起きた世界的規模の金融危機の経緯とその背景にある米国経済の仕組みを、素人でも解るような構成と言語で説き明かしていく。途中、細かいところが解らなくなって、何度か一時停止して、自分の理解が正しいかどうかを配偶者に確認したりしたところもあったけれど、正直言って経済の話にこんなにはまり込めるなんて!ということにまずビックリ。それというのも、結局、2008年の金融危機の本質は、投資会社のお偉いさんたちが政府の官僚や経済学者たちを抱きこんで、合法ではあるが倫理的に大いに問題があるやり方で私腹を肥やしていたという、言わばたちの悪い銀行強盗だったからなのだろう。それは、この映画のタイトルに「内部の者の犯行」という意味のinside jobという用語がそのまま使われていることからも判る。こんな事がまかり通ってしまうなんて、アメリカが民主主義国家などというのは「大いなる幻影」であり、実際には、ごく一部の人間たちが良い思いをして残りの国民たちが苦しんでいた日本の封建時代や、革命直前のフランスとほとんど変わりないのではないか。アメリカ人のほとんどは、毎月の給料を使い果たしながらギリギリで生きている。それは、徳川幕府が農民を「生かさぬよう殺さぬよう」に支配していた状況と驚くほど似ているのではないか、とさえ思えてきた。

アメリカ経済についてのドキュメンタリーを観て、こんなにも感情的になるとは… 優れたドキュメンタリーは劇映画より遥かにドラマティックだったりする。

エンタメ・キッド



日曜日は都合さえつけば、DVDを観ながら夕食をとるのが習慣化しつつある我が家、Netflixのほか、図書館からタダで借りられるDVDも大活用。今週は、リクエストしておいた「ゾディアック」(「ソーシャル・ネットワーク」、「ドラゴン・タトゥーの女」と好きな作品を連発したフィンチャーで未見の作品を観たかったので)、「シャイニング」(ヴィヴィアン・キューブリックが作ったメイキング映像を含むスペシャル・エディションがあったので)、そして、評判が悪かったので劇場で観るのは見合わせた「ツーリスト」がいっぺんに来てしまったので、今週末はDVD祭になりそう。
このうちR指定ではないのは、「ツーリスト」だけで、娘はジョニー・デップの大ファンだし、行ったことのあるヴェネツィアが出てくるので興味を示すと思いきや、「観たくない」。え?どうして~?と聞いたら、「レーティングが悪いから」。いや、PG-13だから大丈夫だよと言ったら、「違う。エンターテイメント・ウィークリーがDを付けていたから観たくない」。
12歳の子供が言う台詞じゃないんですけど…

*「ツーリスト」の名誉のため追記しておきますが、EW誌の「ツーリスト」評、実際にはDではなくてCが付いていました。

Wednesday, March 7, 2012

JUSTICE... is served!



今朝ついに、例のマックブックプロ@スタバ強奪事件の裁判の予審に証人として出廷してきました。
検察官に質問されたら、こう答えて、被告の弁護人に突っ込まれたら、こう応戦して…などといろいろ考えて、前夜は寝つくのにちょっと時間がかかってしまったりして…(苦笑)

このスタバ強奪事件、私の地元カルバーシティだけでなく、エルセグンドという街でも起きて、そちらの被害者も証人として来ていました。その人に聞いてみたら、彼こそが容疑者に果敢にタックルしたうえ、逃亡車のナンバーを憶えていて逮捕のきっかけを作った人でした。その人がそこまでしてくれなかったら、犯人グループはいまだに犯行を重ねていたかと思うと、彼に大感謝!です。

予審は結局、被告側が司法取引をした(おそらく罪を認めることによって刑を軽減しようとした)ため、私たちの証言は必要無しということになり、初めて証言台に立つ!というドキドキしそうながらも話のタネになりそうな(コラ!)経験は出来ずじまいになりました。弁護人に付き添われて出廷した被告は、何度か目を拭っていて事の重大さにいまさら気づいた様子で、担当刑事の話だと「とても反省している」とのこと。それでも、州刑務所で2年服役の実刑判決になったということで、警察側としては「上出来な結果」なのだとか。(ただ、ずっと超過密状態のカリフォルニア州刑務所のことだから、この被告のような非傷害事件の囚人は刑期も半分以下になるのではないかと思われます。)

予審が行われた法廷では、他にも10件以上の予審が行われていて、私たちと同じ所で待機していた被告たちも居れば、拘置所の名前が入ったシャツを着て手錠をかけられて別のドアから入って来た被告たちも居ました。弁護士も、いかにも弁護士っぽい人も居れば、え~、このオバちゃんが弁護士なの~?という格好の人も居て、それも様々。唯一、法服を着てそれっぽく部屋を睥睨していた判事と、黒いスーツを着こなして、きびきびと動くキャリア系といった感じの担当女性検事だけは、この人たちなら法廷ドラマの検事役にキャストされてもおかしくないな、と密かに考えていた不謹慎な犯罪物ドラマファンは私です。(笑)

Sunday, March 4, 2012

火と戯れる女:原作書と映画と

スティーグ・ラーソン著の「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」は、デヴィッド・フィンチャーによる映画化作品を観て、原作を読んで、そして本国スウェーデンの映画化作品を観るという順番で鑑賞してきたが、「ミレニアム」三部作の第二作「火と戯れる女」はまず原作を読んだ。(幸いにもロサンゼルス図書館に日本語訳の蔵書があって、日本語訳で堪能できた。)

「ドラゴン・タトゥーの女」は、40年ほど前に起きたティーンエージャーの失踪事件の謎を中心に、富豪一族の複雑な人間関係が絡むミステリー小説だったが、2作目の「火と戯れる女」は、わずか数時間のうちに3人の人間が殺される殺人事件が主軸となり、刑事マルティン・ベック・シリーズを髣髴とさせるような警察小説仕立てになっている一方で、ヒロイン、リスベット・サランデルの過去が明らかにされていくサスペンスも味わえるという、1作目とは趣がガラリと違う小説になっているのは、嬉しい驚きだった。サランデル・ファンとしては、身長150cmちょっとの小柄な彼女が小気味良く大の男どもの攻撃をかわしていくくだりは、かなりのカタルシスでもあった。

「火と戯れる女」は、スウェーデン版は既に映画化されているということで、早速DVDを借りてきて観ることにした。

本作は、キャストは前回と同じだが、前作より20分も短くなっている。同じ連続殺人事件を、サランデルが犯人だと決めてかかっている警察と、サランデルの無実を信じているミカエル・ブルムクヴィスト、そしてサランデル本人が追っているのに、上映時間は短くなっているから、自然とはしょっているところも多くなる。サランデルとミカエルは、この「ミレニアム」シリーズの主役であるから、はしょれないのは理解できるが、その犠牲になっているのが刑事たちだったのは、原作が優れた刑事物ミステリーの色彩が濃いだけに残念だった。
その結果、スウェーデン映画版「火と戯れる女」は、原作のストーリーを映像化しただけに留まる「薄い」作品になってしまっている。

小説の映画化というのはなかなか難しい。ベストセラーだったりすると、読者の期待やイメージを裏切らない映像化にしなければいけないが、まずそれ以前に、映画製作者側が、原作に対して自分なりに消化した解釈や視点を持って臨まないと、文章で書かれた小説をカメラで撮影してなぞっただけの作品になってしまう。
その良い例が、スティーヴン・キングの「シャイニング」。1980年にスタンリー・キューブリックが「シャイニング」を映画化した際は、原作のあちこちを大きく削った代わりに、キューブリックが関心を寄せていたと思われる部分を大きく膨らませ、その結果、キューブリックの個性や美学が全編を通してこちらに伝わってくる、ホラー映画の名作の1つになった。ところが、原作に忠実ではなかったということでキングは大いに不満だったらしく、自ら脚本を書き、製作総指揮まで務めて、1997年にTVのミニシリーズとして「シャイニング」を発表。確かに原作に忠実ではあったが、逆に「こんなんだったら原作を読めば済む、観る必要を感じない作品」だと思わせるような凡庸な結果に終わっていた。キングのヴィジョンは原作を読めばわかるわけであって、映画というメディアに作り変える以上、そこに作り手の新たな創意が入らないのであれば作る意味は無い。

そのような事を考えると、デヴィッド・フィンチャーの「ドラゴン・タトゥーの女」は、映画作家としてのフィンチャーの個性が随所にうかがえる良質の映画になっている。アメリカの評論家の中には、ノオミ・ラパスのサランデルに比べ、ルーニー・マラのサランデルは冷たい、人間性が感じられないと評している人も居たが、私は逆に観客にさえ心を開かないようなサランデルに魅力を感じた。それと、ブルムクヴィストは明らかにダニエル・クレイグの方が適役。原作でのミカエルは、ハンサムというわけではないが、女性を惹きつけずにはいられないような魅力がある人物として描かれているが、スウェーデン版でミカエルを演じたミカエル・ニクヴィストには、失礼ながらそのような魅力は感じられなかった。

ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」は期待されていたほどのヒットにはならなかったので、続編が作られるかどうかについて、必ずしも楽観的にはなれないような状況らしいが、フィンチャー+クレイグ+マーラのトリオで是非、残りの2作も映画化してもらいたいものである。