Sunday, March 22, 2009

どら平太とオバマ大統領


土曜日は最寄の図書館に寄るのが日課になっていて、昨日は市川昆監督の「どら平太」(2000)をDVDの棚に見つけたので借りてみた。

市川昆監督は、「犬神家の一族」のように娯楽的かつ商業的な作品を撮る一方で、「股旅」のような作家性の強い作品も撮る非常に面白い監督さんだったけれど、アメリカに引越してしまったこともあって、晩年の作品は全く観ていないことに、去年、市川監督が亡くなった際に気づいていたので、これは良いめぐり合わせだと思って借りてみたのでした。

江戸時代の日本社会の仕組みや、「奉行」、「家老」、「藩」など、基本的な考えを全く知らない配偶者に、説明を加えながらの鑑賞は、時としてまだるっこしかったけど、中盤、どら平太が本領を発揮するあたりから、もうガイジンのことは放っておいて鑑賞に熱中。観終わったのは夜中の2時過ぎだったけど、少しも眠くならずに楽しめた。

作品自体は、「用心棒」の椿三十郎的なキャラが「遠山の金さん」の“手口”で世直しをするという、時代劇には珍しくないパターンなのではあるけれど、1つだけ、ガイジンの配偶者をも瞠目させるところがあった。

<ここからネタバレになります>



それは、最後の方のクライマックス・シーンで世直しを敢行した「どら平太」のスピーチ。

どら平太「悪銭に頼っていてはお城の台所は肥えても、ここに暮らす人たちの心は豊かにはなりません。だいたい物があり過ぎるということは良くありません。ほどほどが良いのです。武士も町人も本当の豊かさを求めて、与えられた国土を拓く。自ずから、人それぞれに生きる知恵を愛でる心が育まれて、御家は安泰、良民は万歳です」

アレ…?これって、似たようなことをごく最近聞いたような…?
と一瞬思った後、すぐに閃きました。
そうだ!コレって、一昨日、見たジェイ・レノのトークショーに出ていたオバマ大統領の言葉とほとんど同じ趣旨じゃん!

オバマ大統領「過去15年、20年、我々の経済成長の40%という非常に大きな部分が金融部門によって生み出されてきた。今になって判ったのは、その大部分が現実のものではなかったということだ。それは紙上の金であり、帳簿上の利益に過ぎず、簡単に無くなってしまうようなものだった。我々に必要なのは着実な経済成長だ。大学を卒業してくる若い人たちに、投資金融業者などではなくて、エンジニアや科学者、医者、教師になってもらわねばならないのだ。実際に物を作り、人々の生活を豊かにすることに貢献するような職業への報酬を高くすれば、我々の経済にはしっかりした基盤ができる。そうすれば、過去数年、非常に大きな問題になっているバブル経済のような問題は避けることができるはずなのだ」

つまり、ヤクザ者がヤクザな稼業で儲けた金=金融部門によって生み出された虚構の利益、と置き換え、国土開墾=科学技術に根ざした社会の進歩に置き換えると、どら平太の政策はオバマの政策にピッタリと当てはまるというわけです。
どら平太こと望月小平太は山本周五郎の創造した架空の人物ですが、おそらく江戸時代、そのような政策を考え、実行に移していた賢人大名や名奉行も居たはず。
江戸時代の日本の政治が21世紀のアメリカ合衆国の政治に重なるなんて、ちょっとエキサイティングなことじゃないですか!などと思った土曜日の夜更けでした。

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