アメリカ合衆国史初の黒人大統領が誕生する歴史的瞬間とあって、ワシントンDCではもちろん、LAでもTVに釘付け状態の人が多かったと思う。子供の学校でも、教室で就任式を見せたようだった。
人種差別はまだまだ存在するけれど、黒人、白人を問わず、オバマが大統領に就任するのを観て感極まって泣く人たちを見ていたら、アメリカというのはやっぱりいろいろな意味でパワフルな国なのだと実感した。
普段は、単純でおバカな人たちが多いこの国を馬鹿にしているところがある私だけれど、この日はアメリカ人たちがちょっと羨ましく思えた。
その後で、ずっと観たいと思っていた「スラムドッグ$ミリオネア」を観に行った。
「スラムドッグ$ミリオネア」の舞台はインドのムンバイ。日本やアメリカでしか暮らしたことの無い私のような人間には想像を絶するような住環境であるスラムで生まれ育った少年が、いくつもの苦難を経験して大人になっていくが、少年時代に出逢った少女に対する初恋の思いを貫く、と一言で書くとメロドラマみたいに聞こえてしまうような話だが、インディーズ一筋で作品を撮ってきたダニー・ボイルは、センチメンタリズムを適度に抑えて時にはユーモアも織り交ぜて描いている。
映画はいきなり主人公のジャマルが拷問されているところから始まる。インドのマフィアにでも捕らえられたかと思うが、拷問しているのはインドの警察。観客は、ジャマルが何をしでかしたのか、全く判らないまま、拷問シーンを見せられてオロオロするような気持ちになるのだが、やがて、この映画が、ジャマルが現在の状況に至るいきさつを刑事に話す形で進行していっているのに気がつく。バス停留所のベンチでチョコレートの箱を抱えたフォレスト・ガンプが見知らぬ老婦人に自分の身の上話を語っていくのと同じ構成である。
この語りの手法と、インド・ロケを敢行した映像の臨場感、躍動感溢れるカメラワークで、ともすれば暗く感傷的になりがちなストーリーが、スリリングでいっときも退屈させないジャマル青年の波瀾万丈の半生を描くドラマになっていて、社会派的なテーマや要素を持ちながらも一級のエンターテイメントに仕上がっていて感心させられた。
エンターテイメントと言えば、この映画の最後にインドっぽいエンターテイメントのオマケがついているので、ストーリーが完了しても決して席を立たないことをオススメしたい。
「スラムドッグ$ミリオネア」についてこれ以上語ることはネタバレになりかねないので控えるが、オバマの大統領就任式と「スラムドッグ$ミリオネア」という、ノンフィクションとフィクションのドラマを同じ日に観て思ったのは、人間、どんな状況でも希望を捨てちゃいけないんだ、ということでした。
2009年が希望という言葉に相応しい年になってもらいたいものです。
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