Tuesday, October 6, 2009

INGLORIOUS BASTERDS


もう先々週の話になってしまうけれど、配偶者に昼間の時間が取れた日があったので、マチネで映画を観に行くことにした。

選んだ映画はクエンティン・タランティーノの新作「イングローリアス・バスターズ」。
配偶者も私もタランティーノ作品は大好きで、最初のデートで映画談議に話が弾んだ後、2回目のデートで配偶者は私にいきなり「パルプ・フィクション」のサントラCDをプレゼントしてくれたことなんかもあった。
さて、「イングローリアス・バスターズ」。
まず、冒頭のクレジット・シークエンスのバックグランドミュージックに「アラモ」のサントラが登場。オープニング・シーンもちょっと「シェーン」を連想させる映像だったりして、フランスが舞台なのにいきなり西部劇調で始まった。いや、ヨーロッパが舞台だからマカロニ・ウエスタンの方が近いのかな。(上にコピーしたポスターなんかも、セルジオ・レオーネっぽい?)だったら、“クレープ・ウエスタン”とかなんとか呼ぶべき?なんて、くだらない想いが一瞬頭をよぎったりして。

ストーリーは、“イングローリアス・バスターズ”(“不名誉なろくでなしたち”という意:ただし、本来ならBastardsとスペルするところをBasterdsとしてるのはドイツ人が付けた仇名だからわざとミススペリングしているとか??)と呼ばれる、アメリカ人の少数部隊がフランスを占領していたナチスドイツ軍を次々と攻撃していくゲリラ戦記と、酷薄なゲシュタポに家族を皆殺しされた女性の復讐譚とが、並行して進行し、最後に“Operation Kino”と呼ばれる作戦で、2つのストーリーが集約するという形を取っている。

話の展開も、登場人物のキャラ作りも、台詞も、ディテールも、さすがタランティーノ、というか、映画という媒体を知り尽くしている人物によるものだということが、すごく良く解って、観ていて心地良かった。

キャスティングも非常に上手い。イングローリアス・バスターズの中には、“ドイツ語に堪能なイギリス人将校”や、“オーストリアからアメリカに移民したユダヤ人”という設定のキャラが出てくるんだけれど、そのいずれにも英語が堪能なドイツ人俳優を起用。アメリカ人、イギリス人、ドイツ人のいずれが観ても、しっかりリアリティのあるキャスティングになっている。(この言葉の問題は、もしかして「キル・ビル」でルーシー・リューを日本人にした失敗から学んだのかも?なんて邪推ですが)

しかし、キャスティングにおける最も顕著な成功は、何といっても、オーストリア出身の俳優、クリストフ・ヴァルツの起用だろう。ヴァルツの演じたハンス・ランダ大佐は、表面上は非常に紳士的で優雅ですらあるが、教授と見まがうような容貌の下にはサディスティックな怪物が潜んでいるという不気味さを体現していて見事だった。ちなみに、ヴァルツはオーストリア生まれという生い立ちもあって、語学に堪能。映画の中でも、まずは流暢なフランス語を披露した後、「私には英語の方が楽なので」とことわって(最初はアメリカ人の観客のための御都合主義的な言い訳かと思ったが、実はしっかりとした意味があることが後で判る)、これまた流暢な英語で台詞をしゃべる。もちろん、母国語であるドイツ語は完璧。さらに、イタリア語まで披露するシーンがあって、そのマルチリンガルぶりには、大いに脱帽した。
「イングロリアス・バスターズ」は、このクリストフ・ヴァルツの演技を観に行くだけの目的で観に行っても損はしない映画である。

No comments: