Friday, October 11, 2013

「キャプテン・フィリップス」


2009年、アフリカのソマリア沖で、アメリカ合衆国籍の貨物船が、ソマリアの海賊たちにハイジャックされた事件を映画化した「キャプテン・フィリップス」を試写で観た。

2009年4月、貨物船マースク・アラバマ号はソマリア沖でいきなりソマリアの海賊4人組に襲われる。乗組員たちは、フィリップス船長と数人のクルーを操縦デッキに残し、全員、エンジンルームに身を潜める。海賊4人組のリーダーは、“スキニー”と呼ばれる小柄なソマリア人、ムセ。4人の中で英語が一番堪能で、かつ度胸と判断力も備え持つ侮れない相手だった。海賊たちに船を思い通りにされないよう、フィリップス船長とクルーは、海賊たちの眼を盗んで、アラバマ号を動かないようにするが...

ソマリア沖2009年4月12日の事件のように、実際に起きた事件を基にした場合、観客はストーリーがどのように終わるか、判っていることになる。結末がわかっていながらも面白い映画にするためには、ストーリー・テリングをスリリングなものにしなければならないが、監督のポール・グリーングラスは無駄な時間をいっさい使わず、事件の最初から最後までをかっきりと追う。その構成は、スタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」と通じるところがあるように思えた。グリーングラスはドキュメンタリー出身だけあって、手持ちカメラを多用した撮影が効果的に使われているし、ソマリア人海賊役には、アメリカに移住したソマリア人コミュニティでオーディションして、演技経験の無い人間を起用したとのことで、それも作品のリアリズムを倍増させていたと思う。

1つだけ、ちょっとな〜と思ったのは、アメリカ海軍が出てくるシーン。まるで海軍のプロモビデオのような映像は、アメリカ人ではない私には軍事力を誇示しているかのように映って、興ざめしそうになった。

それにしても、秋は「ゼロ・グラビティ」や「キャプテン・フィリップス」のような力作が次々と出てくるから油断できない。派手なだけの大味な大作ばかりがハリウッド映画ではないと認識させられる時期でもあるが、興味深いことに、「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロンはメキシコ人だし、「キャプテン・フィリップス」のグリーングラスはイギリス人。そういった海外の才能たちも積極的に取り込んで、アメリカ映画産業に貢献してもらうのも、昔からのハリウッドの得意技。映画界も移民の国アメリカの縮図になっているというわけか...






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