Wednesday, December 18, 2013

「ウォルト・ディズニーの約束」


毎年この時期になると、各映画会社はオスカー狙いの作品をどっと放出する。オスカー狙いの作品=秀作とは限らないが、大物監督だったり実力派俳優がキャストされていたりするから、こちらとしても観たくなる作品が多いのも確か。

そんな作品の1つ、「ウォルト・ディズニーの約束」を試写で観た。

ディズニーがした「約束」とは、「メアリー・ポピンズ」が大好きな娘たちに同書を映画化してやると言ったこと。その約束を守るために、ディズニーは辛抱強く20年もの間、「メアリー・ポピンズ」の原作者P.L.トラヴァースに 映画を承諾するよう頼み続けるが、トラヴァースは「メアリー・ポピンズは売り物ではありませんから」と頑に断り続けてきた。が、トラヴァースも「メアリー・ポピンズ」シリーズを書かなくなってからは経済的に余裕が無くなってきており、エージェントの強い勧めで渋々、ロサンゼルスに行ってディズニーと会うことを承知するが...

要は、この映画は「メアリー・ポピンズ」製作秘話といった作品なのだが、ディズニー製作による映画なので、ほぼ綺麗事しか描かれていない。
例えば、最初は非常に非協力的で難癖ばかりつけているトラヴァースがどんどん懐柔されていくように描かれているが、実際は彼女は最後まで映画化作品に不満だったらしい。「メアリー・ポピンズ」の続編の映画化には決して承諾することが無かったことでも、彼女の苦々しい後悔が推し量れるだろう。また、ウォルト・ディズニーも何かとネガティブな逸話の残る人物だが、ここではトム・ハンクスによって、狡猾なビジネスマンというよりは苦労人で好人物な社長的さんといったイメージに仕立てられてる。(何と言っても演じているのが私生活でもナイス・ガイであることで知られているハンクスですからね〜)

そういう甘さが鼻につくことはあっても、この作品を駄目にしていないのは、ひとえにトラヴァース役を演じているエマ・トンプソンのおかげだろう。いかにもイギリスの(トラヴァースは実際にはオーストラリア出身なのだが)インテリ女性の高慢を絵に描いたような人物を完璧に体現していて、甘過ぎるプロットを救っている。
甘い、甘い和菓子を食べた後にいただく抹茶のさわやかな苦味を思い出した。





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