Saturday, June 9, 2012

ボリショイ・バレエの「白鳥の湖」

写真はLos Angeles Timesのサイトから拝借しました。

ロサンゼルスに来ているボリショイ・バレエの「白鳥の湖」を観に行きました。
娘の通っているバレエ教室を通しての「学生割引」を利用したので、通常75ドルの席が35ドル(+8ドルの手数料)というオトクなチケット。♪

初日だったせいか、パフォーマンスの前にバレエ評論家による「白鳥の湖」やチャイコフスキーについての簡単なレクチャーがあって、開演時間より早めに着いたので、聴いてみたら、話し上手な人でなかなか面白かったです。
例えば、「白鳥の湖」は初演の際は、まずい振り付けだったこととダンサーたちが一流でなかったことが災いして、非常に評判が悪く、衣装がボロボロになった時点で上演を止めてしまったこと、チャイコフスキーはその後、「眠れる森の美女」の作曲を依頼され、それが大評判になってやっとバレエ音楽の作曲家として成功を収めたこと、そして、「白鳥の湖」はチャイコフスキー没後2年経ってから、名振付家マリウス・プティパが再発見して振り付けし直したことによって、復活、名作バレエの仲間入りを果たしたということ。ちょっと調べればわかる事なのだとは思うけれど、知っていて損はないトリビアをいろいろ聴くことができました。

さて、ボリショイの「白鳥の湖」ですが、何より一番感心したのは、コール・ド・バレエの見事さ。ロシアのバレエ団は、ボリショイにしてもキーロフにしても、一糸乱れぬコール・ドの美しさで有名ですが、それを自分の眼で生に実感できたのが嬉しかったですね。次々に変わる配列がどれもほぼ完璧。上げられる脚や腕の角度もほとんど同じ。まあ、これは身長がほぼ同じダンサーを何十人も揃えられる一流バレエ団の強みなのでしょうが、アメリカのバレエ団ではここまで徹底したコール・ドにはできないと思います。

逆に一番不満だったのは、主役のオデット/オディールかなあ...
写真はLos Angeles Timesのサイトから拝借しました。

私たちが行った回でオデット/オディールを踊ったのは、アンナ・ニクリーナ(↑写真)というダンサーだったのですが、パンフレットの解説では彼女は「Leading Soloist」となっていました。ソリストよりは上だけどプリンシパルではないといった位置づけなんですかね。金曜日の夜や土曜日の夜といった、客がたくさん集まる回の同役はプリンシパルのエカテリーナ・クリサノヴァというダンサーが踊ったようで... まあ、安いチケットなんだからしょうがないといえばしょうがないのですが、二クリーナさん、なんか存在感が足りない感じだったんですよ。悲劇のヒロインでピュアなオデットはともかく、王子を誘惑するオディールはいかにも役不足。コール・ドが見事なだけに、よけい影が薄くなっちゃって... 32回のフェッテも最後ふらついて、なんかごまかして終わってたし。アメリカ人観客は大喝采していたけど、娘と私は「最後、ヤバかったよね...」と囁き合ってしまいました。二クリーナさん、ピケターンとかはすごいスピードでくるくる回れるんだけど、ピルエット系の回転技が弱いという印象を受けました。それから腕の使い方もイマイチだったんですよね。「白鳥の湖」の振り付けでは、腕の動きがかなり大切なはずなんだけど。

でも、全体的には質が高いパフォーマンスだったと思います。それから、この「白鳥の湖」、「ブラック・スワン」での「白鳥の湖」同様、悲劇で終わるオリジナル版だったのですが、私が過去に観たのはいずれも最後、王子がロットバルトを破って人間に戻ったオデットと結ばれるハッピーエンド版だったので、悲劇版が観られたのも収穫でした。
娘にも大いに勉強になったようで、これからも予算が許す限り(苦笑)、なるべくプロのバレエ団の舞台を見せてあげたいなあ...と思ったのでした。

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