Sunday, October 28, 2012

「クラウド アトラス」


「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟あらためウォシャウスキー姉弟(兄だったラリーが女性に性転換してラナになったので)と、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァが共同監督した「クラウド アトラス」の試写に行った。

「クラウド アトラス」は、6つの時代、6つの場所を舞台に、ストーリーが展開する。

1. The Pacific Journal of Adam Ewing(directed by ウォシャウスキー姉弟)
1849年、サンフランシスコから太平洋航海に旅立つ若き弁護士(ジム・スタージェス)が、迫害される奴隷の青年に出会い、それまでの人生観に疑問を持つようになって...

2. Letters From Zedelghem(directed by ティクヴァ)
1936年、スコットランド人の才能ある青年作曲家(ベン・ウィショー)が、恋人の青年(ジェームズ・ダーシー)のもとから離れ、傲慢な老作曲家(ジム・ブロードベント)の自宅に住み込んで作曲の筆記係になるが...

3. Half Lives: The First Luisa Rey Mystery(directed by テイクヴァ)
1973年、サンフランシスコの女性ジャーナリスト(ハル・ベリー)は、勤務先の原子力研究所における不正について良心のとがめを感じていた科学者(ダーシー)に取材をすることになった矢先、殺人事件に遭遇する...

4. The Ghastly Ordeal of Timothy Cavendish(directed by テイクヴァ)
2012年、ロンドンで破産寸前になっている出版業者(ブロードベント)が金の工面を兄(ヒュー・グラント)に頼もうとするが、弟に対する復讐心に燃える兄の計略にはまってしまう...

5. An Orison of Sonmi-451
2144年、「ネオ・ソウル」と言われる巨大都市で、遺伝操作によって造られた女性(べ・ドゥナ)は、完全にプログラムされた生活をおくっているが、レジスタンス活動家(スタージェス)と恋に落ちて、人間としての自覚に目覚めていくが...

6. Sloosha's Crossin' An' Ev'rythin' After
24世紀の地球、Big Fallと呼ばれる地球的規模の滅亡が起き、生き残った人間たちは原始人の生活に戻って細々と暮らしているが、そこに超進歩的技術を持った世界からの女性(ベリー)が訪れ、そこに住む部族の男(トム・ハンクス)を案内人として、神として人々が崇めていたSonmiが住む山に向かうが...

原作は未読なのだが、時代も場所も異なる6つのストーリーが巧みに織り成されて展開していっているらしい。映画の方も、それを踏襲すべく、出演俳優のほぼ全員に、6つのストーリーのどこかに登場させ、輪廻転生を示唆している。
例えば、主演と目されるトム・ハンクスは、第1話では主人公の青年が乗り込む船に同乗する医師、第2話では主人公の青年が滞在するホテルのフロント係、第3話ではヒロインに協力する原子力研究所の研究員、第4話では主人公の出版業者の顧客であるギャングの男、第5話では劇中映画の俳優、第6話では24世紀で蛮族に攻撃されながらも生き残ろうとする部族の男を演じているといった具合。
その試み自体は野心的で評価されるべきだと思うのだが、西洋人であるスタージェスに特殊メイクを施して韓国人のレジスタンス活動家に扮させたり、黒人のベリーをユダヤ人女性に化けさせたりと、不自然な特殊メイクで無理やり複数の役を演じさせている点が気になって、ストーリーに集中したり登場人物に共感を覚える妨げになっているように思われたのが残念。

それと、2時間52分の長尺とはいえ、6話もあるから1話あたりに割ける時間は30分たらず。しかも、どの話もそれだけで1本の映画が作れてしまうような内容ゆえ、それぞれ急ぎ足でストーリーをなぞっているように感じられ、内容も登場人物も深く掘り下げられることがないものだから、その世界になかなか入り込むことができないように感じられた。

「クラウド アトラス」、TVのミニシリーズ的にするか、「1900年」(1976)のように前編・後編を分けて一挙上映というかたちにした方がもっと成功したかもしれない。


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