Sunday, September 20, 2020
R.I.P. RBG
Friday, September 11, 2020
”ステイングホーム・ライフ”で見ているテレビドラマ
いや〜〜〜、このブログ、ずいぶん御無沙汰しちゃいました。
最後の更新はなんと去年の11月。コロナウイルス禍とは無縁で、映画もガンガン観に行けた幸せな日々…
今年は、4月初め〜6月半ばの10週間をコロナウイルス禍が深刻化していた日本で過ごし、帰って来たら今度はカリフォルニアも大変な事になっていたのだけれど、元々、おうちが好きで、インターネットと好きなドラマ、好きな本でもあれば、1週間家におこもりしていても平気な性分ゆえ、おそらく世間一般の人々よりは”コロナストレス”にはなっていないような気がする。
でも、やはり映画に行けないのは辛い…気持ち的にも辛いし、映画について書く仕事をしているから、仕事面でも辛い。
非常事態下、2号分休載にはなった後はそれまで通りに連載を書かせていただいているのだけれど、新作映画が封切られないので、世間一般の皆さんと同じように新作をネット配信で観たり、生まれて初めてドライブインシアターで映画を観てみたりと、cinemanerd=映画オタクとしては妥協以外の何物でもない映画の鑑賞で我慢している状態が続いて、もうすぐ3か月になる。
そんな中で毎日欠かさず見ているのは、録画してあるテレビドラマ。
最近は、夕飯食べながら1本、デザート食べながら1本と、毎日2本のテレビドラマを見るのが日課になっている。
現在、ローテーションして見ているのは、50年代の同名ドラマをリブートした”Perry Mason”(HBO)、「レイ・ドノヴァン」(Showtime、シーズン7=最終シーズン)、「ブラックリスト」(NBC)、「S.W.A.T.」(CBS)、「マニフェスト」(NBC)、そして今年の2月から放映が始まったものの、わずか12話でキャンセルになってしまった警察もの”Tommy”(CBS)の6本。
その中で、ダントツに面白いのは”Perry Mason”。
オリジナル版を再放送で見たことがあるという私の配偶者曰く、オリジナル版は弁護士ペリー・メイスンの活躍を描く型通りの法廷ものだったそうだが、2020年版”Perry Mason”は、1930年代のロサンゼルスを舞台にメイスンを私立探偵として登場させ、乳児誘拐事件から端を発する殺人事件を追うという、ノワール仕立てのドラマになっている。
私は大のミステリ好きゆえwhodunitとして展開するストーリーを大いに楽しんでいるが、同時に1930年代のLA街並みや建物、ファッション、小物などが完璧に再現されている贅沢な製作ぶりにも目の保養的な楽しみを味わっている。
Sunday, November 10, 2019
「ドクター・スリープ」鑑賞の手引き
「シャイニング」は、1980年に名匠スタンリー・キューブリックが映画化。モダン・ホラーの傑作として知られているが、原作者のキングが大いに気に食わなかった映画化作品としても有名である。
「ドクター・スリープ」は、一言で言えば、あたかもキングとキューブリックの仲を取り持とうとしたかのような作品である。しかし、それを理解するには以下の3つの条件をクリアする必要がある:
1)「シャイニング」の原作を読んでいる
2)「シャイニング」の映画化作品を観ている
3)「ドクター・スリープ」の原作を読んでいる
3つの条件を全て満たすのは大変すぎる、無理、という人でも、少なくとも「シャイニング」の映画化作品は観ておかないと、「ドクター・スリープ」は観る意味は無いでしょう。
「シャイニング」の映画は観たけど、「シャイニング」の原作と「ドクター・スリープ」の原作、2冊も読むのは無理、という場合であるならば、「シャイニング」の原作を読む方を優先させましょう。その方が、「ドクター・スリープ」を観た時に、「おお、そう来たか!」と思えます。でもって、「ドクター・スリープ」は映画鑑賞後に原作を読むのも、或る意味、面白いはず。
キューブリックの「シャイニング」は5回以上観た、原作も3回以上読み直した、「ドクター・スリープ」ももちろん読んだ、という私のようなマニアックなファンの場合、「ドクター・スリープ」の映画化作品は、ニヤリとさせられるディテールが盛りだくさん。もっとも、「やり過ぎだろーが、それは」と呆れさせられる場面もありましたが…
「ドクター・スリープ」、日本公開は11月29日の予定。
Saturday, February 23, 2019
オスカー予想@KPCC
最近よく聞くNPR (National Public Radio)のパサディナ局、KPCCが、昨日、4人の映画評論家によるオスカー予想パネル・ディスカッションを放映していたので、覚書的に書いておくことにする。
*「観客票」は拍手のボリュームで観客の支持する作品を判断していた
*リンクした作品は、わたし的2018年ベスト10入りさせた作品
*作品賞
本命:「ROMA/ローマ」
穴馬:「ブラックパンサー」「ボヘミアン・ラプソディ」
観客票:「ROMA/ローマ」
*監督賞
本命:アルフォンソ・キュアロン「ROMA/ローマ」
穴馬:ヨルゴス・ランティモス「女王陛下のお気に入り」
観客票:キュアロン、スパイク・リー「ブラック・クランズマン」
*主演男優賞
本命:ブラッドリー・クーパー「アリー/スター誕生」
穴馬:ウィレム・デフォー「永遠の門 ゴッホの見た未来」
観客票:レミ・マレック「ボヘミアン・ラプソディ」
*主演女優賞
本命:オリヴィア・コールマン「女王陛下のお気に入り」
穴馬:グレン・クローズ「天才作家の妻−40年目の真実−」
観客票:クローズ
*助演男優賞
本命:リチャード・E・グラント「ある女流作家の罪と罰」
穴馬:サム・エリオット「アリー/スター誕生」、マハーシャラ・アリ「グリーンブック」
観客票:グラント、エリオット、アリで票割れ
*助演女優賞
本命:レジーナ・キング「ビール・ストリートの恋人たち」
穴馬:エマ・ストーン
観客票:キング
*オリジナル脚本賞
本命:「グリーンブック」
穴馬:「女王陛下のお気に入り」
観客票:「グリーンブック」
*脚色賞
本命:「ある女優作家の罪と罰」
穴馬:「ブラック・クランズマン」、「ビール・ストリートの恋人たち」
(観客票、聞かず)
*アニメーション賞
本命:「スパイダーマン:スパイダーバース」
観客票:「スパイダーマン:スパイダーバース」
いろいろ妥当だと思うラインアップ。
面白かったのは、パネリストたちが「本当は**に受賞してもらいたいけど、おそらく##が受賞すると思う」とコメントする事が多かったこと。自分の評価と、票を集める作品・映画人はズレる事が多々あるからねえ。特にアカデミーは、年配の会員が多いから、どうしても観やすい作品や、わかりやすい力演・熱演に票が集まりがち。
さて、今年のオスカー受賞はどうなるかな?
我が家では、毎年の恒例行事、LA タイムズ紙に付いてくる投票用紙にあらかじめ予想をチェックし、「当たった〜!」「外れた〜!」「どうして、あんなヤツが受賞するんだ〜?」と大騒ぎしながらのTV観戦(?)となる予定です。
Sunday, February 3, 2019
2018年に観た映画わたし的ベスト10
まあ、それはともかく…
前半は娘の高校・バレエ卒業と大学進学準備に追われ、後半はempty-nesterとしての生活の切り替えにまごまごしているうちに終わってしまった2018年だったが、娘のバレエ教室送り迎えが無くなって試写会に自由自在に行けるようになった事に加え、1ヶ月10ドルで3本まで好きな映画が観られるMoviePassなる会員制映画鑑賞プログラムに入ったので、9月以降は観に行く映画がグッと増えた。それでも数えてみたら、まだ年間50本に満たない数。ガンガン名画座に通った日本での学生時代や、授業のための上映や映画人を招待しての試写が毎日のようにあった映画学科の大学院時代とは比べ物にならないが、映画館に行く自由度が18年前に戻った感があって嬉しい。
No.2
「バスターのバラード」(The Ballad of Buster Scruggs)
大好きな監督の1人、コーエン兄弟の新作。開拓時代の西部を舞台に、短編小説の映像化という形で展開するオムニバス映画。詳しくは過去のブログを御参照ください:http://www.cinemanerd.com/2018/11/blog-post_24.html
No.3
「ROMA/ローマ」(Roma)
大好きな「トゥモロー・ワールド」の監督、アルフォンソ・キュアロンが、メキシコシティで育った少年時代を回想して作った自伝的作品。冒頭、掃除されている床が映るがしばらくして、そこに水が流され、突然、そこに空が映ってスクリーンとなり、そこを飛行機が画面を横切る映像の詩情に感嘆。全編がそのような静かな映像詩に満ちていて、小津やトリュフォー、あるいはフェリーニの作品を想起させるところも映画マニアには堪らない秀作。
No.4
「妻たちの落とし前」(Widows)
夫たちの犯罪を見て見ぬ振りしてきた妻たちが、強盗に失敗して命を落とした夫たちがやらないままにしていた銀行強盗計画を実施するよう迫られるという設定のノワール。ヴィオラ・デイヴィス、ミシェル・ロドリゲス、エリザベス・デビッキ(「コードネームU.N.C.L.E.」)、シンシア・エリヴォという、人種も年齢も社会的階級も異なる4人の女性が寄り集まって実行不可能に思われる犯罪計画を進めていく過程が実にスリリング。「それでも夜は明ける」で人種差別の理不尽を追求したスティーヴ・マックィーンが女性軽視の理不尽にスポットライトを当てている点にも要注目。
No.5
「アリー/スター誕生」(A Star Is Born)
とにかく、ヒロインを演じるレディ・ガガの存在感は圧倒的。ジャクソン・メインに誘われて初めてステージに立って絶唱するシーンは鳥肌が立った。ストーリー自体は、過去に3本も作られているだけあって目新しくはないが、ブラッドリー・クーパーとガガの相性がバッチリで、最後までダレること無く観客をグイグイ引っ張る牽引力にも拍手。
No.6
「クワイエット・プレイス」(A Quiet Place)
ホラーは苦手な私だけれど、独創的なストーリーと無駄の無い演出に感心させられた。
*この予告、「IT」を引き合いに出しているけど、全く質の違うホラーだと思うんだけどなあ…ヒット作なら何でも出しちゃえ、という宣伝はヨクナイよ…
No.7
「ブラック・クランズマン」(Blackkklansman)
久しぶりにスパイク・リー作品を観た。彼の作品は政治スローガン色が濃すぎて敬遠しがちなのだけれど、この作品は肩の力が良い具合に抜けていて、楽しく観られて良かったな。
No.8
「グリーンブック」(Green Book)
ホリデー・シーズンに相応しく心温まる映画。私の個人的テイストには少しばかり甘過ぎるのだけれど、世知辛い世の中になっているので、たまにはこういう映画も良いと思った。
No.9
「ブラックパンサー」(Black Panther)
ブラックパンサーより、オコエ将軍(ダナイ・グリラ)のファンになった。以上。
オコエ将軍紹介クリップ
No.10
「スパイダーマン:スパイダーバース」(Spider-man: Into the Spider-Verse)
「スパイダーマン」を今更アニメーションで観るの?という疑問が無いでもなかったけれど、観て良かった!と思わせる優れもの作品。丁寧に作られているのがよく判るのも好感が持てた。
番外編:
「RBG」
去年の公開時に劇場で観逃してしまったのでDVDで鑑賞したが、劇場で観ていたら間違いなく去年のベスト5入りしていただろう作品。女性たちにとっての最強ヒーローであるアメリカ合衆国最高裁判所判事のルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー。劇映画化された「ビリーブ 未来への大逆転」(On the Basis of Sex)の方が日本公開が先になるが、このドキュメンタリーの方が出来はずっと上だと思うので、こちらもお見逃し無く!
Saturday, November 24, 2018
「バスターのバラード」
第1話「The Ballad of Buster Scruggs」:バスター・スクラグス(ティム・ブレイク・ネルソン)という名のカウボーイが、歌を唄いながら町の酒場にやってくる。賞金がかかったお尋ね者のバスターは、行く先々で銃口を向けられるが…
第2話「Near Algodones」:荒野の中にポツンと立った銀行で強盗をはたらこうと立ち寄ったカウボーイ(ジェイムズ・フランコ)だが、思わぬ展開に…
第3話「Meal Ticket」:両腕両脚の無い青年にストーリーテリングをさせながら、あちこちの村々を渡り歩く男(リーアム・ニーソン)だが、次第に客が減って行き…
第4話「All Gold Canyon」:ロバを連れた初老の男(トム・ウェイツ)が美しい河のほとりで金脈を見つけようとひたすら穴を掘り続け…
第5話「The Gal Who Got Rattled」:オレゴン移住を目指して兄と妹の2人連れが大平原を横断するキャラバンに参加するが…
第6話「The Mortal Remains」:駅馬車に乗り合わせた5人の乗客。1人1人が自分の身の上話を語り始める…
「バスターのバラード」は、25年ぐらい前からコーエン兄弟が、暇を見つけては書きためてきたショート・ストーリーに基づいているとか。6話全てに共通しているのは「死」というテーマ。最終話が、そのテーマを見事にまとめてくれている。
日本でも11月16日からNetflix配信によって観られるそうなので、Netflixの会員になっている人は是非、観てください。
Saturday, November 3, 2018
「ファースト・マン」
アポロ11号で月面着陸を果たし、人類で初めて月に降り立った(ゆえにfirst man)ニール・アームストロングを主人公とした「ファースト・マン」を観た。
実話に基づいた宇宙飛行士の映画ですぐに思い出すのは「ライトスタッフ」や「アポロ13」だけれど、これら2作と異なり、「ファースト・マン」は、宇宙計画や月面飛行計画に焦点を当てているというよりは、宇宙計画に臨むアームストロングの仕事面と私生活面とを等しく描写。目立つ事を嫌い、自分の事を語りたがらなかったというアームストロングの人となりを深く掘り下げようとする姿勢が印象に残る。
演じるライアン・ゴスリングは、口数が多くはなかったアームストロングに扮しているゆえ、台詞の量は多くないが、代わりに顔の表情、特に眼の演技でアームストロングという人間を演じきっている。静かなる男を静の演技で体現しているというべきか。
それにしても、監督のデイミアン・チャゼルは、まだ33歳。26歳で「市民ケーン」を発表したオーソン・ウェルズほど早熟ではないが、監督3作目にして「ラ・ラ・ランド」を創り、4作目で「ファースト・マン」を創ってしまった力量は凄い。
Friday, October 19, 2018
10月に観た映画5本
ということで、10月に入ってから観た映画をカプセル・レビュー的に御紹介していきたい。
「ヴェノム」(試写)
これまでの「スパイダーマン」シリーズでも少しだけ顔を覗かせたことのある悪役ヴェノムを主役にしたスーパー・(アンチ)ヒーロー物作品。ただし、本作にはスパイダーマンは出て来ないし、ヴェノムも悪役というよりはデッドプールに近い、スーパーヒーローらしからぬスーパーヒーローという定義の方がしっくりくるようなキャラだ。
ヴェノムを演じるのは、トム・ハーディ。実力・カリスマ共に備えた俳優なので、ヴェノム役もそつなくこなしている。
作品自体は「まあ、こんなもんでしょ」といったところ。マーヴェル映画化作品が好きな向きは楽しめるだろうが、スーパーヒーロー物に食指が動かないのであればスルーしても構わないと思う。
「アリー/スター誕生」(試写)
落ち目になりつつある男性スターが新進の女性スターを抜擢。(そのついでにw)恋に落ちるが、女性スターが急速にスターダムにのし上がっていく一方で男性スターは酒に溺れていく、というストーリーラインの「A Star Is Born」の4度目の映画化。
日本の観客には、おそらく1954年製作の2作目の「スタア誕生」が最も馴染み深いと思われるが、本作はバーブラ・ストライサンド主演の3作目に倣い、音楽界が舞台で、ヒロインを演じるのはレディー・ガガ。このガガの存在感がハンパなく凄い。ガガには女優志望だった時期もあって、演技学校に通った経験もあるから、歌手が片手間で女優してますという感じは皆無だった。監督と男性スター歌手役を兼任したブラッドリー・クーパーも、これが監督デビュー作だとは思えないほどの力量。歌も上手い。アメリカの俳優・歌手たちって本当に多才。
ガガ演じるアリーが初めてステージで熱唱するシーンは鳥肌ものです。オスカーは多部門でノミネートされる事は間違いない力作。
「The Old Man & The Gun」(日本公開日時未定)MoviePass
70代になってもなお”現役”で、同じシニア仲間たちと一緒に銀行強盗をやらかしていたフォレスト・タッカーという実在の人物を描く作品。タッカーには、この作品が俳優として出演する最後になると言われているロバート・レッドフォードが扮している。役どころとしては、サンダンス・キッドと「スティング」のジョニー・フッカーを足して2で割ったようなキャラ。レッドフォードは老いてもなおチャーミングで、それが良く活かされた作品ではあったけれど、故意にそうしたのか、とにかくドラマチックとは無縁のトーンで淡々と進んでいくので、正直、途中でちょっと飽きてしまった時があった。実際の話に忠実に映画化したのかもしれないけれど、映画にするに当たってはもう少しばかり脚色を加えて欲しかった気はした。日本映画で言えば、黒澤派ではなくて小津派にオススメの作品です。
「Bad Times at the El Royal」(日本公開日時未定)(試写)
映画は、モーテルの一室らしい場所に男が入ってくるところから始まる。男の服装からして時は1960年ぐらいらしい。このプロローグ、何が何だかわからないまま終わるが、後に重要な意味を持ってくるという事だけ書くにとどめておこう。
時は流れて1970年。舞台はカリフォルニア州とネバダ州の州境を挟んで建てられたモーテル、エル・ロワイヤル。ベルボーイ1人だけしか居ない、ちょっと奇妙なモーテルに、ワケありな客たちが訪れる。掃除機のセールスマン、牧師、言葉数の少ない黒人女性、好戦的な若い女性。それぞれの部屋にチェックインした客たちだが、全員が奇妙な行動を見せ始め…
ストーリー進行の先が見えず、意外な展開に「そうくるか〜」と思わせられるのが楽しい。かなりバイオレントなシーンもあり、私の斜め前に座っていた年配の女性2人組は映画が始まって30分ぐらいで退場していたが、タランティーノ作品が観られる人なら大丈夫。そういえば、この作品、タランティーノの「ヘイトフル・エイト」に通じるところがある。あの映画もどんでん返しが楽しい作品だった。
キャストも、ジェフ・ブリッジス、ジョン・ハム、クリス・ヘムスワース、ダコタ・ジョンソンとなかなか豪華です。
「The Hate U Give」(日本公開日時未定)(試写)
現代アメリカの人種差別の現実を女子高生の視点で描いた社会派作品。ヒロインの女子高生が、黒人女子のステロタイプではなく、教育熱心な母親によって白人が大多数を占める私立高校に通っているという設定がストーリーに多層性を加えている。映画の前半は、観ている者の心に響くパワーを備えているが、後半、ややフォーカスが散漫になってストーリーの盛り上がりが充分でなかったように思えたのは残念。
と、10月に観た5本の映画を駆け足で御紹介。
10月はあともう1本、今週末に、人類として初めて月面を歩いた宇宙飛行士ニール・アームストロングを描いたデイミアン・チャゼル(「ラ・ラ・ランド」)監督作品「ファースト・マン」を観に行く予定です。
Sunday, October 7, 2018
「華氏119」
マイケル・ムーアの新作「華氏119」を観た。
タイトルの数字、119とは、2016年11月8日の大統領選挙の翌日を表す数字で、トランプが大統領になってからのアメリカ社会・政治を描いている。
「華氏119」は、まず大統領選で大方の予想を裏切ってトランプが大統領になってしまったところから始まる。"How the f*ck did this happen?(なんでこんな事になっちまったんだ?)」というムーア自身の言葉がそれにかぶさるが、その時のアメリカ国民、少なくとも、トランプを支持しなかった国民の半数以上の気持ちをこれ以上端的に表す言葉は無いだろう。
映画は、そこから、ムーアの故郷、ミシガン州フリントの汚染水危機と街の荒廃ぶり、ウエストヴァージニア州の公立学校の教師たちが置かれている窮状、そして17人の犠牲者を出したフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校乱射事件をとり上げ、それぞれの状況から生き残ろうと闘う人々を描くと共に、その原因を作り出したアメリカ社会のシステムやその「仕掛け人」である政治家たちの欺瞞を暴いていく。さらに、そのような問題に国民が何もしないでいたらどのような結果になるかを、1930年代のナチスドイツの台頭という過去の黒歴史と重ねて警告する。
ムーアはアメリカの映画監督の中では異色の存在である。政治的スタンスではリベラルに当たるのだろうが、民主党の政治家たちのために華やかにファンドレイジングをするハリウッドのエリート・セレブたちとは一線を画し、常に庶民の視線でものを見る事を目指す。「華氏119」でも、リベラルVS保守、民主党VS共和党という観点ではなく、あくまでも執政者としての政治家たちがアメリカ国民に対して何をしてきたか、という事に着目した姿勢を一貫させている。
民主主義は、あくまで民が主となる政治体制でなければならないはずなのに、民主主義を世界中に説く建前を取ってきたアメリカの民主主義が確実に崩壊に向かっている。アメリカに住みながら参政権を持たない外国人居住者の私にとっては、もどかしい思いでいっぱいになりながらエンディング・クレジットを見つめるばかりだった。
Thursday, September 13, 2018
「ザ・プレデター」
試写で「ザ・プレデター」シリーズ最新作を観た。
頑強で容赦無い戦闘型エイリアンであるプレデターが地球にやってくるところはオリジナル版と同じだが、対峙するグループを人間vsプレデターという単純な図式に収めていないところがミソ。
シュワルツェネッガーのようなスターは出演していないけれど、そこそこ手堅い演技を見せる俳優たち(ボイド・ホルブルック、オリヴィア・マン、スターリング・K・ブラウンなど)を揃えたキャストも好感が持てたし、ちょっとしたところにギャグを入れたりするユーモアもナイスだった。
B級作品には違いないが、ポップコーン映画としては上出来な方ではないかと思う。
ちなみに、結構グロい描写(内臓飛び出しまくりとか脚をスパッとか)が出てくるので、そういうのが苦手な人は閲覧注意というか鑑賞注意です。
Tuesday, September 11, 2018
THE LEFTOVERS
シリーズ最終回はアメリカでは2017年6月に、日本でさえ同年9月に放映を終えているのに今更感が強いですが…(汗)

「LEFTOVERS/残された世界」はトム・ペロッタの同名小説が原作。シーズン1は、或る日突然、理由も無く人口の2%だかが消え去ってしまうという「突然の旅立ち」に向き合う人々を描いた原作の映像化という形を取っていたが、評判の良さゆえ、シーズン2、シーズン3が製作されたという経緯があった。
そういう後付けの続編だと、映画の場合、ロクな作品にならなかったりするわけだが、「LEFTOVERS/残された世界」のシーズン2では、舞台を東海岸の架空の町メープルトンから、「突然の旅立ち」が一件も起こらなかった「奇跡の町」ジャーデンに移し、新たなキャラクターを登場させることによってストーリーを発展させていくという賢い策を取って成功。シーズン3では、「突然の旅立ち」とは何だったのか?旅立っていった人々には何が起きたのか?という事を中心に、3シーズンを完結させていく。
「突然の旅立ち」というスーパーナチュラルな事象が中心になりつつも、描写はあくまでリアルなので、不思議な非現実感を覚えさせる独特の雰囲気が持ち味。最初は取っつきにくかったが、一度、「残された世界」にハマると妙な魅力でぐいぐいと引き込まれていくこと請け合いのドラマだった。
それに加えて素晴らしかったのがマックス・リヒターのスコア。特に「旅立ちのテーマ」というメロディはグッときました。
リヒターは、私が大好きな映画の「メッセージ」のサウンドトラックも手がけています。
ついでに、もう1つ。リヒターによるヴィヴァルディの「四季」のリコンポジション
(「メッセージ」の音楽に使われているコードの動きが、ここでも使われています)
Monday, September 3, 2018
怒涛の冬〜春〜夏 in 2018
1月〜3月は娘の大学申請&合否発表で、なんだかあっという間に過ぎ去った感じ。
4月の初めに合格した大学のうち3校を訪ね、進学先を決定。
一安心したら、今度はバレエ教室最後の春公演の出演で、ソロ2役とジャズの「グリース」のサンディ役をいただいて、嬉しかったけど練習は大変に…しかも練習中に転んで骨挫傷をやらかして、休養を余儀なくされて、教室のディレクターに嫌味言われたりと、また一悶着。
まあ、春公演は無事に終わったし、公演直前には地元の無料紙に写真入りで記事が出て”1日セレブ”状態になったりもして、良い思い出になったわね、と言っている間に、早くも卒業式(その前にプロムなんかもあったりして、男友達にちゃんとお誘いをいただいてロング・ドレスを奮発。気分はプリンセス−大柄ゆえクィーンの貫禄もあったという説も…(笑)
卒業式が終わって2日後、3年ぶりに日本に帰省。後半は梅雨入りしましたが、3週間、日本を楽しんでこちらに戻り、その1ヶ月後には大学のオリエンテーション開始と、本当に怒涛のように過ぎた7ヶ月でありました。
娘を大学にドロップオフした後、LAに戻り、晴れて旦那とempty-nesterの仲間入りです。
「これで思い切り映画も観に行ける」とばかりに、旦那は早速1人10ドルで月3本まで映画を観に行けるMoviePassなるものに自分と私を入会させ、昨日の土曜日は、早速、友人夫婦と話題のロマコメ「クレイジー・リッチ!」を観に行きました。
映画は他愛の無いコメディだったけれど、主要キャストが全員アジア人という変わり種なのにアメリカでヒットしているというのは、アジア系住民としては素直に嬉しかったです。
Monday, January 8, 2018
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
”ペンタゴン・ペーパーズ”というのは、1966年に当時国防長官だったロバート・マクナマラの指示を受けたランド研究所がベトナム戦争の経緯や戦況を分析した報告書。当時、ランド研究所所属の国防政策研究者だったダニエル・エルズバーグは、アメリカ国民に対してベトナム戦争の実態を隠し続ける事に疑問を持ち、こっそりと文書をコピーし、ニューヨーク・タイムズ紙にリークする。
「ペンタゴン・ペーパーズ」は、ニューヨーク・タイムズ紙の大スクープに「出し抜かれた」というジャーナリストとしてのプライドと、国民に対して真実を伝えなければいけないという報道魂に突き動かされたThe Postことワシントン・ポスト紙の編集部が、最高裁から記事の差し止めを受けてしまったニューヨーク・タイムズ紙の援護射撃をするような形でペンタゴン・ペーパーズの報道に踏み切る過程を描く。
その中心になるのは、当時のポスト紙の編集長だったベン・ブラッドリーとオーナーだったキャサリン(ケイ)・グレアムなのだが、ブラッドリーを演じているトム・ハンクスとグレアムを演じているメリル・ストリープがさすがにうまい。ともすれば、ちょっとやり過ぎになるスピルバーグの演出を熟練した俳優ならではの演技力でちょうど良い”あんばい”にしているあたりには脱帽した。脇を固める演技陣の中では、ボブ・オデンカーク(「ベター・コール・ソウル」)が実に良かった。彼は世慣れたはしっこさを持つキャラクターを演じさせると特に輝く役者だと思う。
それにしても、数々の映画評が指摘していたが、半世紀近く昔の話なのに、今のアメリカと気味が悪いほどの類似性を持つのは何とも… ニクソンをトランプに置き換えたら、そのまま2017年のニュースになりそうなシーンでは観客から苦笑が漏れたほど。
スピルバーグも、この映画を作るなら今年しか無い!と思って、急ピッチで製作した「ペンタゴン・ペーパーズ」、観るなら今しか無い!
Sunday, December 31, 2017
2017年を振り返る
大晦日なので、ざっと2017年を振り返ってみると…
*映画
今年公開された映画の中で印象に残った作品は
「LOGAN」:ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの有終の美を飾るのに相応しい出来だった
「ワンダーウーマン」:ガル・ガドットはゴッデスです。以上(笑)
「ベイビー・ドライバー」:或る意味、ミュージカル以上にミュージカルな映画
「ダンケルク」:「プライベート・ライアン」以来の臨場感ある秀作戦争映画
「スリー・ビルボード」:登場人物全員が完全な善人でも悪人でもないというところがナイス
「シェイプ・オブ・ウォーター」:「エターナル・サンシャイン」以来のベスト恋愛映画
この他にも、きっと好きだったと思うけれど見逃した作品が多数あるので、DVDで観ることになりそう。
*娘のバレエ
今年で10回目にして最後の「くるみ割り人形」で、11月の感謝祭の週末とその翌週の週末、本公演が1日2回で計8回、サンタモニカ学校区の小学生たちを招待した短縮版公演が2回と計10回を踊り切り、無事終了。
今年は、やっと長年のドリームロールだった「花のワルツ」のセンター、デュードロップ・フェアリーを踊れて悔いの無い公演になりました。
2017年は、娘にとって大学受験の年でもありました。
アメリカでの大学受験は一発試験ですべてが決まる日本と違い、全米共通テスト(SAT or ACT)だけではなく、ハイスクール2年目=ソフォモアの年と3年目=ジュニアの年、そして最終学年=シニアの年の前期の成績、先生&学校のカウンセラーの推薦状、エッセイと呼ばれる小論文、さらに課外活動を伝えるサプリメントなどを提出するので、シニアの年の夏休みから準備を始めねばなりません。
娘は、カリフォルニアの公立大学であるカリフォルニア大学(UCバークレーとかUCLA等々)やカリフォルニア州立大学には1つも行きたいところが無い、出来たら親元から遠く離れた大学に行きたいということで、カリフォルニアの私立大2校を除いては、全て東部の私立大学を受験しています。その多くが受験申請締め切りが1月1日ということで、今年は、その追い込みでクリスマスらしいクリスマスも無く、追い込みをかけ、昨日の12月30日、全ての受験申請を終えて、ホッと一息ついているところです。
結果がわかるのは3月終わりから4月中旬ぐらいにかけてだそうなので、今から4ヶ月近くは気が休まらないけれど、ジタバタしてもどうしようも無いので、どこか1校は引っかかるさ…ぐらいの気持ちで居ようと思っています。
2018年は、娘が(願わくばw)大学に進学し、9月からは私たちもいわゆるempty nesterになり、自分のために使える時間が増えるので、何か新しい事を始めた方が良いのかな…とぼんやり考える大晦日なのでありました。
Wednesday, January 11, 2017
再び「ラ・ラ・ランド」について
去年の秋から冬にかけて観た映画について書いた日記でも触れたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」だけど、ゴールデングローブ賞のコメディ・ミュージカル部門で作品賞をはじめノミネートされた7部門全てで受賞を果たすという記録的快挙を成し遂げたので、もう少し詳しく書きたいと思う。
「ラ・ラ・ランド」は一言で表現すれば、ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーで、それ自体としては特に傑出したストーリーだというわけではないが、夢を追う若き2人の住む街がla la landと称されるロサンゼルスだというところが象徴的かつ効果的なセッティングになっている。la la landという呼称は、LAと呼ばれるLos Angelesと、la la =夢心地のland=地、要は「夢見る街」という意味を二重に含めた言葉として、やや揶揄的にロサンゼルスを呼ぶ際に使われる言葉だが、「ラ・ラ・ランド」はそれを逆手に取り、夢見て何が悪い?、夢を見ることこそ若さの特権じゃないか?と主張する。
そんな映画だからこそ、主人公たちはすんなりと歌と踊りに入っていけるわけで、そんな主題や舞台を選んだ監督・脚本のデミアン・チャゼルの才能には感心した。
ところで、この映画は、実に印象的なダンス・シーンで始まるのだけれど、それを見てすぐに連想したのは、ジャック・ドゥミ監督の「ロシュフォールの恋人たち」だった。特に下のシーンで使っている曲や全体の印象がすごく良く似ている。
*ダンサーの中でオレンジ色のシャツを着ているのは「ウエストサイド・ストーリー」で有名なジョージ・チャキリス
ちなみに、今年のゴールデングローブ賞は、「ラ・ラ・ランド」のパロディで始まる実に愉快なオープニングだった。
(*以下のクリップは「ラ・ラ・ランド」本編を観てから見ることをオススメします)
Sunday, January 8, 2017
秋〜冬季にかけて観た映画たち
「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」Miss Peregrine's Home for Peculiar Children
いかにもティム・バートンな世界が展開するファンタジー。時空を超えたストーリーがスリリング。バートンのベスト作ではないけれど、バートン・ファンは必見でしょう。
「ザ・コンサルタント」The Accountant
ベン・アフレックが昼は自閉症の会計士、夜はプロの殺し屋として暗躍するユニークなキャラを演じるクライム・サスペンス映画。アメリカの映画評論家の間での評判はイマイチだったけど、私は結構好きだった。一風変わったアクション映画が好きな向きにオススメ。
「Keeping Up with the Joneses」(日本公開未定。DVDスルーになる可能性もあるかも?)
ザック・ガリフィアナキスとアイラ・フィッシャー演じる平々凡々な夫婦の近くに、ジョン・ハムとガル・”ワンダーウーマン”・ガドット演じるジョーンズ夫妻が引っ越してくる。一見パーフェクトな夫婦に見えるジョーンズ夫妻だったが、その正体は… というドタバタ・コメディ。御代はタダの試写だから観に行ったけれど、ケーブル放映まで待っても全然オッケーな映画。ワンダーウーマンのパーフェクト・バディを拝みたい向きにはオススメ、かな?
「インフェルノ」Inferno
日本でも去年の10月に公開されていましたが、すごく凡庸な出来。ロン・ハワード、どうしちゃったんだよ〜〜
「ドクター・ストレンジ」Doctor Strange
何と言ってもベネ様演じるドクター・ストレンジがカッコ良すぎ!!建物ぐるぐる回りまくるCGも良くできていたし、クスッと笑える台詞も多くて大いに楽しみました。ベネ様のファンはもちろん、スーパーヒーローが苦手な人にもイケるんじゃないか思う映画です。
「メッセージ」Arrival
エイリアンが突然、地球上に来訪し、彼らが発するメッセージをエイミー・アダムズ演じる言語学者が解読を試みるというストーリー。というと、「未知との遭遇」あたりを連想する人が多いかもしれないけれど、もっとずっと深い内容を包含する作品。エイリアンものSFを期待して観に行くと期待外れになってしまうかもしれないけれど、そのテの映画は興味無いと思ってスルーしたら絶対損する佳作。わたし的には今年のベスト1を挙げたい映画。
「Nocturnal Animals」
これまた主演のエイミー・アダムズ演じるギャラリーのオーナー、スーザンのところにジェイク・グレンホール演じる元夫から「ノクターナル・アニマルズ(夜行動物)」と題された小説の草稿が送られてくる。映画は小説を読むスーザンと小説の内容とが交互に登場して同時進行していく形が取られている。公開された年に数々の映画賞にノミネートされた「シングルマン」を監督したトム・フォードの新作ということで期待して観に行ったのだけれど、とにかく劇中小説の内容が救いようのないストーリーで滅入ってしまった。完成度の高い作品であることは認めるけれど、観た後の疲弊感が半端なかったです。
「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」Fantastic Beasts and Where to Find Them
日本でも去年の11月に公開済みの作品。ハリポタ・シリーズは本は未読、映画も最初の4〜5本しか観ていないのだけれど、それでもとても面白かった。パン屋の経営を夢見るジェイコブ・コワルスキーを演じていたダン・フォグラーがすごく良い味を出していました。
「Hidden Figures」
1960年代のアメリカの宇宙開発事業を人知れず支えていた黒人女性数学者たちを描く作品。声高ではないけれど、しっかりと地を踏みしめて自分の姿勢を貫くヒロインたち、そして彼女たちを演じるタラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネル・モナエが素晴らしい。理系女子たち、そして彼女たちを支援する親や先生たちには是非観てもらいたい映画。(高校生の娘はこの映画を観た後「よし!私も数学と物理の期末試験頑張る!」とインスパイアされていましたから−笑)
「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」Rogue One: A Star Wars Story
これも日本公開済みですね。期待していなかったんだけど個人的には「フォースの覚醒」より見応えがありました。ドニー・イェンの座頭市みたいな戦士がカッコ良かったなあ。
「Fences」
1983年に初演されたオーガスト・ウィルソンの同名舞台劇を、2010年のリバイバル上演の際に主役を演じてトニー賞を受賞したデンゼル・ワシントンが監督、主演した作品。1950年代のピッツバーグを舞台に、初老夫婦の日常を描く。デンゼルと共演のヴィオラ・デイヴィス(2010年の舞台版にも出演してトニー賞を受賞)の演技の迫力は凄かったけど、舞台劇の映画化ということで、映像的なダイナミズムに欠けるところがあったのがちょっと残念だった。
「パッセンジャー」Passengers
120年間、眠りにつきながら惑星の植民地に旅する5000人の地球人たちの中で1人だけ、目覚めるべき時の90年も前に目覚めてしまったエンジニア(クリス・プラット)をめぐるアドベンチャーを描く映画。先の展開が読めてしまうところもあったけれど、プラットと共演のジェニファー・ローレンスの存在感でなんとか最後まで飽きさせずに観られます。非常に上出来なCGIもみもの。
<この映画に限っては知識を最小限にして観た方が楽しめるので予告編はリンクしませーん>
「アサシン・クリード」Assassin's Creed
ビデオゲームの映画化ということで興味があまり無かったので、よっぽど試写をパスしようかと思ったのだけれど、出演者がマイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤール、ジェレミー・アイアンズという豪華キャストだったから、それほどハズレはなかろうと思ったのですが…すごく退屈でした。大したヒネリの無いストーリーに、メリハリを欠いたアクション・シーンがこれでもか、これでもかと続くだけの映画だったんで。ビデオゲーム版のファンの人にはこれでも面白いのかな…
「ラ・ラ・ランド」La La Land
最高に楽しいミュージカル映画。La La Landことロサンゼルスを舞台に、エマ・ストーン演じる女優の卵とライアン・ゴズリング演じる自分の店を持つことを夢見るジャズ・ミュージシャンの青年の恋を歌と踊りで見せるという他愛の無い内容ではあるのだけれど、「ロシュフォールの恋人たち」をお手本にしたと思われるノリがすごくチャーミング。31歳でこれだけ完成度の高いミュージカルを監督したデミアン・チャゼル(「セッション」Whiplash)は、やはりタダ者ではなかったようで。デート映画としても超オススメ!
ちなみに今日発表されたゴールデン・グローブ賞ではノミネートされた7部門全て(作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞、音楽賞、主題歌賞)で受賞を果たす快挙を遂げていました。
<番外編>
「2001年宇宙の旅」2001: A Space Odyssey
アメリカン・シネマテークが70mmプリントで上映するというので、ハリウッドのエジプシャン・シアターまで娘と一緒に観に行きました。私はこれが3度目の鑑賞。いまだに古くならないキューブリック・マジックに圧倒されたけれど、娘はピンとこなかったみたいで観終わった後の感想は「疲れた」。映画オタクの母はガクッ…(涙)
Friday, December 30, 2016
「くるみ割り人形」2016
もう1ヶ月も前の話になってしまいますが、今年も娘のバレエ教室の「くるみ割り人形」の公演がありました。
今年は、感謝祭の週末の土日の1時と5時、翌週の金曜日の7時、土日の1時と5日と計9回の本公演に、サンタモニカの小学校の子供たちを無料招待してのダイジェスト版公演が3回、さらに一般の人たちが無料で見られる公開リハーサルが1回と計13回のパフォーマンスとなりました。
今年踊らせてもらった役は、前年同様、スノウフレイクの群舞の他、第2幕プロローグのエンジェル(センター)、スパニッシュ(サイド)、葦笛(サイド)、「花のワルツ」の群舞のリーダー、デミ・フラワーでしたが、今年はそれに葦笛のセンターと、ダイジェスト版でのスノウ・クィーン、そして「花のワルツ」のソロ、デュードロップ・フェアリーが加わったのが嬉しいキャスティングでした。
本来はパドドゥであるスノウ・クィーンの役は男性ダンサーが出なかったため、ソロの振り付けに改変しなければならなかったのですが、アーティスティック・ディレクターの先生、なんと娘に「自分で振り付けてみなさい」とパフォーマンスの数日前に言い渡し、娘は大慌てでパドドゥの振り付けを取り入れたソロを降りつけるというハプニングまでありました。彼女が過去のスノウクィーン・パドドゥのDVDと睨めっこしながら振り付けするのを見ていて気付いたのは、パドドゥって基本的にゆっくりな音楽なんですよね。男性がリフトしたり、男性の支え手でパンシェしたりアラベスクしたりする振り付けに合うようになっているから。そんな音楽でソロの振り付けにするってなかなか難題だったようですが、音楽に合う範囲でいろいろな動きを考え出して先生からも合格点をいただいたみたいでした。
2008年から踊っている「くるみ割り人形」の公演も、来年ハイスクール・シニアの年が最後になります。
Monday, December 26, 2016
アメリカTVドラマ、秋の新シーズン
書こう書こうと思っていた事は少なくなかったのだけれど、なんだかバタバタして書きそびれる毎日でした。
書こうと思っていたお題の1つはTV界、秋の新シーズンから見始めたドラマについて。
1つ1つ書くと数が多くなり過ぎてしまうのでまとめてご紹介します。
まずはハマっているドラマから。
「ウエストワールド」(Westworld)
日本でも10月からスターチャンネルで放映が始まったこのドラマ、さすが最近のTVドラマ黄金時代のきっかけを作ったHBO製作のことだけはある完成度の高い作品。
タイトルからもわかるように「ウエストワールド」は、1973年に「ジュラシック・パーク」のマイケル・クライトンが脚本を書いて監督した近未来SF映画のリメイクなんだけれど、今時のCGIを駆使していて西部開拓時代を再現した擬似世界のウエストワールドがものすごくリアルに描かれている。
「ブレードランナー」にも通じるAIが行き着く先は…という寓話的要素もあって面白い。
ネットワーク局より潤沢な予算を誇るHBOだけあってキャストも超豪華。サー・アンソニー・ホプキンス、エド・ハリス、エヴァン・レイチェル・ウッド、ジェフリー・ライト、ジェームズ・マースデン、サンディ・ニュートンといった映画俳優たちが惜しげもなくキャストされている。
「サバイバー:宿命の大統領」(Designated Survivor)
こちらも日本ではNetflixで配信が始まったようですが、「24」のキーファー・サザーランドが、Designated Survivor=指名生存者といって、アメリカ合衆国の議員たちが一堂に集まる際、テロリズムなどでアメリカの政治を担う人々が全滅することを避けるため、その場に居なくても差し支えないような人物が選ばれ、秘密にされた場所で待機することになっているらしいのですが、キーファーがそのような人物に選ばれた時に、まさかの爆弾テロで大統領や副大統領を含む議員たちのほとんどが殺されてしまうという設定のドラマ。なぜだか知らないけど、常に危機一髪の状況に立たされる男を演じたら右に出る者のいない(ホントか)キーファーが、「24」の時と同様「Damn it!」とつぶやきながら孤軍奮闘しています。
「タイムレス」(Timeless)
このドラマは日本未上陸のようですが(今調べたらAXNチャンネルで4月から放映開始予定になっていました)、歴史学の教授と米軍デルタフォースのメンバー、そしてタイムマシーンを操縦する技師の3人組が、歴史を変えようとする謎の人物を追って、様々な時代にタイムトラベルするという、いわゆるタイムトラベルもの。タイムトラベルするタイミングがヒンデンブルグの大惨事だったり、リンカーン大統領暗殺の夜だったり、はたまたアラモ砦が陥落する時だったりと、常にドラマチックな瞬間だったりして、歴史物ドラマの幕内弁当のような(?)番組です。
「Bull」
タイトルのBullというのは、主人公の心理学者のジェイソン・ブルのこと。トークショー・ホストのDr.フィルをモデルにしたというDr. ブルは、裁判にかけられる被告のクライアントのために、被告に同情的になりそうな陪審員選びと陪審員たちにアピールするような弁護を指導する会社を経営。勝ち目が無さそうな被告に無罪を勝ち取るというドラマ。主役のDr.ブルを演じているのは「NCIS」を”引退”したマイケル・ウェザリー。
この他に新番組で見始めたのは、エージェント・カーターことヘイリー・アトウェルが無実の罪で刑務所に入れられたと思われる人間の無実を証明する「Conviction」、「リーサル・ウェポン」の同名TVドラマ化番組、そして「冒険野郎マクガイバー」のリメイク「MacGyver」だが、「Conviction」はシーズン1のみで終わりそうな気配だし、「リーサル・ウェポン」と「MacGyver」は配偶者がサジを投げた(?)ので、この先、見続けるかどうかは不明。
これら新番組に加えて、以前から引き続き見ているドラマは:
「ブラインドスポット タトゥーの女」、「NCIS:ニューオリンズ」、「ブラックリスト」、「Secets and Lies」(限定シリーズなので既に今シーズンは終了)、「スコーピオン」、「エレメンタリー」、「GOTHAM/ゴッサム」と、14本。1日あたり2本見ないと追いつけないスピードだけれど、締め切りがあったりする日は見られなかったりするし、14本中6本は娘も見ている番組ゆえ彼女が宿題に追われていたりすると見られないまま、どんどん録画分が貯まっていく〜〜という状況になって、我が家のDVRは常にパンク寸前状態です。(汗)
Thursday, September 29, 2016
「マグニフィセント・セブン」
先週のことになってしまうけれど、アントワーン・フークア監督の「荒野の七人」のリメイクを試写で観た。
ストーリーは、オリジナル版「荒野の七人」、そしてその元となった黒澤明の「七人の侍」同様、悪者たちに搾取されている村人をアウトロー的な寄せ集めの七人の男たちが救うというお話。
新鮮だったのは、その7人の顔ぶれが、デンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ、韓国人俳優イ・ビョンホン、メキシコ人俳優マヌエル・ガルシア=ルルフォ、ネイティブ・アメリカン俳優マーティン・センスマイヤーという面々であること。オリジナル版の7人が全員白人俳優だったのに対し、新版では7人中白人は3人だけという点だろう。7人が救うのも、メキシコの村ではなく西部の白人の町だし、悪者たちも白人。マイノリティ優勢の集団が弱き白人のために悪しき白人と戦うという点が2016年のアメリカ映画らしい。
「トレイニングデイ」や「イコライザー」といった都会を舞台にした犯罪アクション映画を得意とするフークアだけあって、アクションの描き方はかなり派手。古き良き西部劇を期待した向きにはしっくりこなかったのか、映画評は辛口のものも少なくないようだが、個人的には娯楽映画としてしっかり楽しめた。7人のガンマンたちの個性もそれなりに出ていたし、カッコ良かったし。
「七人の侍」はもちろん、「荒野の七人」との比較なんかしないで観れば、充分面白く観られると思う。
Thursday, September 15, 2016
HBOによる力作ドラマ:「The Night Of」
夏の間の限定シリーズ「The Night Of」を先週、観終わった。素晴らしいクオリティのドラマだった。
「The Night Of」の主人公はクイーンズに住むパキスタン系の大学生、ナズ(リズ・アーメッド)。或る夜、いとこの車でパーティに繰り出すはずだったのに、ドタキャンされてしまう。どうしてもパーティに行きたかったナズは、タクシーの運転手をしている父親と同僚2人が共同所有するタクシーを内緒で拝借してマンハッタンに向かうが、天井灯の消し方を知らないために、道に迷って停車している際に、客待ちタクシーだと思った客が乗り込んできてしまう。営業中でないことを説明して降りてもらうナズだったが、3回目、若い女性が乗り込んできた時には彼女の物憂いな美しさに魅かれてつい乗車を許す。
その女性、アンドレア(ソフィア・ブラック=デリア)は「ビーチに連れて行って」とせがむが、マンハッタンにビーチは無い。仕方ないので、 ハドソン川のほとりに連れて行く。アンドレアは、そこでナズにドラッグ(エクスタシー?)を渡す。躊躇うナズだが、アンドレアに誘われるまま飲むナズ。2人はその後、アンドレアの家に向かい、一夜を共にするが…
ナズを演じるアーメッドは、ラッパーとしてスタートしたパキスタン系のイギリス人だが、眼だけで演技できる生来の俳優。最近は、ラッパーとしての活動より俳優としての仕事の方が多いそうだが、むべなるかな。
アーメッドをはじめとして、「The Night Of」はとにかくキャストが素晴らしい。後にナズを弁護することになるしがない弁護士にジョン・タトゥーロとナズを追及する刑事に舞台俳優として知られるビル・キャンプが、報われることの多くない仕事なのに力のある限りを尽くさずにはいられない中年男たちを演じて、とりわけ良かった。
こういう役者たちの演技を見ると、やっぱりアメリカの俳優のストックって凄いなあ、と思わざるを得ない。
「The Night Of」は、一応、犯人探しのジャンル、who-done-itに該当する推理ものゆえ、これ以上、ストーリーを語るのは”反則”になりかねないので、とりあえずHBOによる予告編のリンクを貼っておきます:
予告編を見るとわかると思うけれど、寒々しい蒼色を基調とした映像も、作品全体のムードによく合っていて賢い選択。
あと、オープニング・クレジットの音楽が私はとても好きだった。
我が家は、基本的にはドラマは録画して見るので、最初のクレジット・シークエンスはたいがい早送りするのだけれど、「The Night Of」だけは音楽が良かったので、早送り無しでした。音楽を担当しているのは、TVドラマ版「ファーゴ」の音楽を担当したジェフ・ルッソ。
オープニング・クレジットは映像も美しい。
「The Night Of」、日本でも放映されるといいのですが…
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