Monday, November 7, 2011

LINCOLN LAWYER



今週末は珍しく書かなければならない原稿の締め切りが無かったので、調子に乗って、昨日に引き続き、今日も最近見落としていた映画をDVDで観ることにする。

今夜のチョイスは、今年の3月に公開された「LINCOLN LAWYER」。
タイトルの「リンカーン」は、エイブラハム・リンカーンからではなくて、アメリカではよくリムジンサービスなどで使用されることが多い高級セダン車、リンカーン・コンチネンタルのこと。主人公のミッキー・ヘイラー(マシュー・マコノヒー)は、刑事事件を専門とする弁護士だが、同業者のようにオフィスを構えることなく、アシスタントのアールに運転させるリンカーン・コンチネンタルの中で仕事をする「リンカーン弁護士」だ。
ヘイラーのクライアントは、モーターバイク・ギャングだったりドラッグ関連のつまらない犯罪に関わる「小物」の犯罪者が多いのだが、或る日、裁判所で保釈金立替業者のヴァル(ジョン・レグザイモ)に呼び止められ、ビバリーヒルズで不動産業を営む青年ルイス(ライアン・フィリップ)の弁護を頼まれる。ルイスは娼婦に対する暴行罪を問われていたが、裕福な自分を狙った「被害者」にハメられたのであって自分は無罪だと主張する。ヘイラーも、最初は、状況証拠を見た限りでは確かにルイスを金づるとみた娼婦の狂言暴行事件だと考えるが、被害者の写真を見ているうちに、過去に自分が担当した殺人事件のことを思い出す...

「LINCOLN LAWYER」は、プロットはそれほどひねられておらず、複雑な謎も秘められていたりしないので、結末近くにあっ!と驚くどんでん返しが待ち構えているというタイプのサスペンス・スリラーではなく、前半が終わる頃には事件の全容が明らかにされる。それ以降、サスペンスの主眼は、我らが探偵役がどのように事件を解決していくかというプロセスに移行する。大ざっぱな括り方をすれば、「コロンボ」タイプのストーリー構成に近いとも言えるだろう。
このようなタイプのサスペンス作品で非常に重要なのは、探偵役のキャラである。観客は、探偵役が事件を解決、収束させていく過程を楽しむわけだから、この探偵役が魅力的でないと、興味は半減してしまう。その点、「LINCOLN LAWYER」の主役を演じたマコノヒーは、適役だった。「評決」でポール・ニューマンが演じたフランク・ギャルヴィンが20年前はこんな感じだったかも?と思わせる雰囲気がある。若い時はいかにも甘い美形のプレイボーイといった感じだったマコノヒーは、40過ぎて良い感じの中年になってきており、ちょっと不良っぽいけど正義感の強い弁護士にピッタリはまっていた。

「LINCOLN LAWYER」は、いわゆるブティック・スタジオと呼ばれる小規模の映画会社ライオンズ・ゲイトの作品ということもあり、現時点では日本公開は決まっていないようだが、上述した俳優たちのほか、マリサ・トメイ、ウィリアム・H・メイシー、ジョシュ・ルーカス、フランセス・フィッシャーといった芸達者な俳優たちがしっかり脇を固めている良質な作品なので、是非、日本でも劇場公開されることを祈りたい。

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