Saturday, September 21, 2013

夏の間に始まったドラマ2題:「ブリッジ」と「レイ・ドノヴァン」

9月が学校の新学期となるアメリカでは、TV界でも9月中旬ぐらいから続々と新番組がデビューし、生き残って続投する番組の新シーズンが始まるが、その前に、夏の間に始まって注目しているドラマ2題について書いてみることにする。

「ブリッジ〜国境に潜む闇」


「ブリッジ〜国境に潜む闇」は、同名題(「The Bridge」)のスウェーデン/デンマーク合作ドラマのアメリカ版リメイク・ドラマ。日本でも放映が始まっているようなので、内容などは公式サイトを参照していただくとして、一言で感想を述べるならば、やっぱり北欧産のドラマは暗いのう...ということですかね。(笑)
アメリカ−メキシコ国境付近で、次々と猟奇的な殺人事件が起きるという設定だから暗くて当たり前ではあるんだけど、邦題にある「闇」を意識したカメラワークとか、登場人物たちの闇の部分、過去の闇なんかを引き出してきて描いているあたりが、やはり純粋にメイド・イン・アメリカの刑事ものとは違うという感じがする。
それでも、「クリミナル・マインド」みたいに救いようが無い気持ちにならずに引き続き観たい!と思わせるのは、ダイアン・クリューガー演じるテキサスの女性刑事ソニア・クロスと、デミアン・ビチル演じるメキシコ側の刑事マルコ・ルイスのキャラに尽きる。ソニアはアスペルガー症だという設定になっていて、「こんな場でそんな事、言うか、フツー?」と突っ込みたくなるような無神経な発言をしたりする。彼女には全く悪気が無いから、唖然とする周囲と彼女のあっけらかんとした表情のコントラストが笑える。マルコは、ちょっと若い頃の三船敏郎を想起させるような二枚目半的なルックスで、愛妻家なのにウッカリ浮気して、それがソニアの例によって無神経な行動であっさり露見し、奥さんから追い出されてしまうという間抜けな所もあるが、暖かみのある昔風刑事という味が良い。ソニアの上司のハンクには、テッド・レヴィンが扮しているが、レヴィンは連続猟奇殺人をテーマにした「羊たちの沈黙」でシリアル・キラー、バッファロー・ビルを演じたことがあったりするので、ちょっと面白いキャスティングだと思った。

「Ray Donovan」

一方の「Ray Donovan」は、と言うと、さて、どのジャンルのドラマだと言えば良いのだろう?
タイトル・ロールのレイ・ドノヴァン(リーヴ・シュレイバー)は、ハリウッドのセレブたちの問題・苦境を公ごとにせずに陰で解決するフィクサーだ。その「解決」には、事実の歪曲(あるセレブと一緒に居たベッドの中で冷たくなっていたコールガールを、ゲイの噂があるスターと一緒に居たことにさせる)や、脅し(アイドル・スターのストーカーの部屋で待ち受けて「今度ストーキングしたらバットを御見舞いするからな」と凄む)、買収の仲介(音楽界の大物プロデューサーが、ヤク中の親を持ちながらも才能の片鱗を見せる少年を養子にするために金でカタを付けようとする)なども含まれる。
そんなドノヴァン自身にも、問題が発生する。殺人のかどで20年間の刑を受けていた父親ミッキー(ジョン・ヴォイト)が、いきなり出所してくる。おまけに、ボストンで、レイの弟バンチー(ダッシュ・ミホク)を子供時代に性的虐待したとされた神父を銃殺してからロサンゼルスに来るというトンデモ親父の帰還に、レイはトラブルを予想して苛立つが...
こんなレイ・ドノヴァンの周囲には、他に、郊外住宅地にウンザリしてビバリーヒルズに引っ越すことを夢見るレイの妻のアビー(ポーラ・マルコムソン)、ボクシングジムを経営するテリー(エディ・マルサン)、レイに仕事をふるハリウッドのプロデューサーの1人、エズラ(エリオット・グールド)らが登場する。
強いて言えば、「ザ・ソプラノズ」に雰囲気が似ているかもしれないが、ロサンゼルスのセレブ文化を舞台にしている点で映画の「ザ・プレイヤー」を想起させるところもある。このドラマも、下手をすればタブロイド雑誌のような猥雑な印象を残すだけの作品になる可能性もあるところを、シュレイバーやヴォイト、グールドやマルサンといった、映画界でも活躍している実力派の俳優を起用することによって、深みのあるドラマに仕立ててあるのが嬉しい。

この2本、これからの展開が大いに楽しみな新ドラマです。


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