Saturday, January 12, 2013
ちょっと残念:L.A. ギャング ストーリー
木曜日は「Gangster Squad」(日本公開タイトルは「L.A. ギャング ストーリー」だそうで...こんなベタな邦題、久しぶりかも...)の試写に行って来た。
第二次世界大戦後のLAの暗黒街は、ユダヤ人マフィアのミッキー・コーエン(ショーン・ペン)に仕切られていた。強制売春から麻薬取引、不法賭博と、手広く“ビジネス”を展開させるコーエンの権力には、ロサンゼルス警察(LAPD)も頭が上がらない。そんな街の状態に嫌悪感を覚えた新署長のウィリアム・H・パーカー(ニック・ノルティ)は、気骨ある巡査部長のジョン・オマラ(ジョシュ・ブローリン)に命じて、コーエンを叩き潰す非公式なチームの結成を命ずる。オマラが選り抜いたのは、サウス・ロサンゼルスの犯罪を知り尽くしている黒人刑事コールマン(アンソニー・マッキー)、盗聴などの技術に精通している頭脳明晰な刑事コンウェイ(ジョヴァンニ・リビシ)、銃使いの腕にかけては右に出る者の居ない刑事マックス(ロバート・パトリック)とその弟分的刑事ナヴィダード(マイケル・ペニャ)、一見軟派だが実は男気あるジェリー(ライアン・ゴズリング)の5人。自分の配下の者たちにさえ失敗を許さない極悪非道なコーエンと、それに対抗して手段を選ばずコーエンを攻撃する刑事6人組の壮絶な“仁義なき戦い”が始まった...
ショーン・ペン、ジョシュ・ブローリン、そしてライアン・ゴズリングというクセモノ揃いのキャストと、1940年代のロサンゼルスが観られるという魅力を感じて観に行ったのだが、正直言って出来の粗さにガッカリさせられた。
まず、冒頭、「実際に起きた事を元にしている」という但し書きが出てくるし、コーエンやパーカー署長、コーエンに対抗するマフィア親分のジャック・ドラグナなど、実在の人物も登場するのに、歴史的事実を歪曲し過ぎてしまっている。例えば、コーエンとドラグナの確執は本当のことだったとしても、ドラグナに関してのかなり重要な出来事が完全なるフィクションだったり、最終的にコーエンが逮捕・投獄された背景についても全く異なる説明になっている。
もう1つ、残念だったのは、まがりなりにも現職の刑事である人間たちがいとも簡単に無実の人間を巻き込むことを厭わないような銃撃戦を平然と展開させていること。「戦争に巻き添え被害はつきもの」なのかもしれないが、それにしてもあまりに無頓着な暴力描写が続くのには、ウンザリさせられた。
歴史的事実の歪曲や強烈なバイオレンスと言えば、クエンティン・タランティーノの近作「イングローリアス・バスターズ」や「ジャンゴ 繋がれざる者」が公開された際にも、そのような論議が起こったが、タランティーノの歴史的事実の歪曲は誰が見ても明白なものであり(ヒットラーが映画館で爆死したとか、南北戦争前に黒人の賞金稼ぎが居たなどと考える人は誰も居ないだろうから)、しかも、それがストーリーの要になっていること、そして、タランティーノの映画監督としての作家性が過激なるバイオレンス描写にあることを考えれば、タランティーノ作品と「L.A. ギャング ストーリー」の決定的な違いは明らかだろう。
監督を務めているルーベン・フライシャーは、「ゾンビランド」がなかなか面白いホラーコメディだっただけに、優れた俳優たちを揃えながらも、この程度の作品にしか成らなかったのは残念である。
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