ジョージ・クルーニー主演の「ファミリー・ツリー」の脚色で、監督のアレクサンダー・ペインと共にアカデミー賞を受賞したジム・ラッシュとナット・ファクソンが監督デビューした作品「The Way, Way Back」を観た。
「The Way, Way Back」の主人公は、14歳の少年、ダンカン。両親が離婚して、母親と暮らしているが、母親が交際中のボーイフレンド、トレントは、嫌なヤツで好きになれない。なのに、今年の夏は、トレントのビーチハウスで休暇を過ごすという。ただでさえ憂鬱な気持ちを抱えているダンカンなのに、ビーチハウスに向かうドライブの車中でトレントに話しかけられる。同行している母親と、トレントのティーンの娘は眠りこけていて、ダンカンには逃げ場が無い。
トレント「自分を1から10のスコアで評価すると何になると思う?」
ダンカン「わからないよ」
トレント「何、言ってんだ。よく考えてみろ」
ダンカン「6、かな」
トレント「俺は、おまえは3だと思う。頑張りが足りないからな」
ダンカン「...」
映画は、こうやって、ダンカンの思いっきり沈んだ気持ちを観客にいきなり共有させる。
上手い導入部だと思う。
「The Way, Way Back」は、そんなダンカンが、トレントと母親との関係に悩まされると同時に、ビーチタウンで出会う人々に癒される一夏の経験を描いているが、大事件が起こるわけではないけれど、大笑いさせられたり、ホロリとさせられたり、全く飽きさせることなく、観客を最後まで楽しませてくれるのは、ひとえに登場人物たちのキャラクターの面白さと、それを演じる俳優たちの演技力の賜物だろう。特に、ダンカンを演じる19歳のリアム・ジェームズの自然さは凄い。演技しているようには見えないけれど、しっかりした演技だということも同時にわかる上手さ。そんなダンカンに対する対照的な大人たちをそれぞれ演じるのは、サム・ロックウェルとスティーヴ・キャレル。ロックウェルが演じるのは、ダンカンの兄貴分的存在になるオーウェン。大人にしてはすごくいい加減だけど憎めないナイスガイ・キャラを好演している。一方、珍しく悪役を演じているキャレルもさりげなく憎らしさを出していて巧い。
派手なアクションやSFXが満載の夏休み映画がひしめきあっているこの季節、こういう映画は、こってりとした料理の間に食べるソルベのような涼味を提供してくれること、間違い無しでしょう。
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