Tuesday, April 10, 2012

BULLY



3月26日付のブログで署名運動について書いた映画「Bully」を観てきた。署名運動では50万人近くの署名が集められたにもかかわらず、米国映画協会(MPAA)はR指定をPG-13に変えようとしなかったので、配給会社のワインスタイン・カンパニーがレーティング無しという扱いで公開することを決心したものの、4月13日からの全米拡大公開にあたっては問題になっているシーンの3箇所のF-wordを消すことによって、PG-13を獲得するという結果になった。ワインスタイン・カンパニーとしても、R指定によって沢山の子供たちに観てもらえる学校など、幅広い上映の機会を逃したくなかったのは解るから仕方ないけれど、私たちはやはり製作者たちが意図したままの状態で観たかったから、PG-13バージョンに差し替えられてしまう4月13日の前に観ておこうと思った次第である。

「Bully」で採り上げられるケースは、オタクっぽいからというだけで同級生たちからいじめのターゲットになっているアイオワ州に住む12歳のアレックス(トップの写真の少年)、レズビアンであることをカミングアウトして以来、同級生たちや先生たちから疎まれ孤立しているオクラホマ州に住む16歳のケルビー、同級生たちからのいじめに耐えかねて母親の銃を持ち出して威嚇したことで少年拘置所に収容されてしまうミシシッピー州在住の14歳の少女ジャメイヤ、オクラホマ州で同級生たちのいじめに独りでひっそりと耐え、つらさの限界を超えて自殺してしまった11歳のタイ、同じく忍耐の限界を超えて自ら命を絶ったジョージア在住だった17歳のタイラーの5人。
特にアレックスは、撮影隊が彼の乗るバスに同乗し、彼が近くに座った生徒たちから執拗ないじめに遭うところを撮影。首を絞めたり、頭を叩いたり、物を投げつけたりと、「子供のいじめだから」と軽く片付けられないレベルであることを証明している。それでも、アレックスはいじめの実情を知ってショックを受けた母親から「そんな子たちは、友達じゃないでしょ?」と言われて、「彼らが友達じゃなかったら僕には友達は居なくなる」と訴える。

映画はタイラーの両親が学校区にいじめ対策を迫る聴聞会を映し、最後にはタイの父親が「Stand for Silent」という団体を創設して、いじめ撲滅運動を広めていく様子を伝える。

監督のリー・ハーシュは、全米を回って学校でのいじめの実態をリサーチ、記録してきたそうだが、自分自身も苛められっ子だったということで、ドキュメンタリーにする対象を絞り込むのに苦労したことだと思う。そうやって、絞り込まれた5人の子供たちだったが、掘り下げ方がややバランスを欠いていると同時に映画全体の構成も緩めであるため、例えばマイケル・ムーアのドキュメンタリーのようなパンチ力が弱まっているのが、残念。
それでも、いじめに対する真摯な問題意識が観ている者を圧倒するし、10代の子供を持っている親、そして中高生たちには是非是非観てもらいたいドキュメンタリーである。
(ちなみに、娘に感想を聞いたのだが、いまひとつハッキリ教えてくれない。あまりにも自分の日常に似ている場所を取材した作品に戸惑っているのか、複雑な気持ちで私たちに伝えきれないのか、判らないのだけれど、少しずつ話し合っていきたいと考えている。)

「Bully」の予告編はこちら
http://www.thebullyproject.com/indexflash.html#/video
オフィシャル・サイトはこちら
http://www.thebullyproject.com/indexflash.html#

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