Tuesday, July 23, 2013

「ウルヴァリン:SAMURAI」



「X−メン」シリーズのスピンオフ「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」の続編「ウルヴァリン:SAMURAI」(原題はシンプルに「The Wolverine」)の試写に行った。

「ウルヴァリン:SAMURAI」は、タイトルでも示唆されているように日本が舞台。物語は、長崎で原爆が落とされる瞬間から始まる。枯れた井戸に捕虜として収監されていたウルヴァリンことローガンは、原爆が落とされる直前に彼を脱出させようとした日本兵ヤシダに出会う。時は流れ、世捨て人のような生活をしていたローガンの前に、日本人女性が現れ、死ぬ前にどうしても御礼が言いたいという人間が居ると伝えるが...

アメリカ映画に日本や日本人が登場すると、当の私たち日本人からすれば「はあああ??」と言いたくなる設定や人物、台詞などが出て来ることが常だが、「ウルヴァリン:SAMURAI」はその点、まあ合格点をあげても良いかと思った。それは、同作はキチンと日本でロケ撮影して、極力、日本人俳優をキャストしたという製作姿勢に依るところが大きいと思う。
その日本人俳優たちの中では、福島リラがとても良かった。アメリカに住んでいたことがあるだけに、英語はかなり上手いし、何より主役のヒュー・ジャックマンと並んでもひけを取らない存在感がある。モデル出身だから、正統派女優である菊池凛子のようなシリアス・ドラマ・ジャンルの映画には向かないかもしれないけれど、今回の作品のようなアクション主体の映画だったら、アメリカの映画でもドラマでも充分やっていけそう。
ヒロイン役の岡本多緒もなかなか良かった。彼女もモデルだけど、“目ヂカラ”が結構あって、台詞が無くてもジッと見つめるだけで多くを語れるような表現力が備わっているように思えた。「ラスト・サムライ」の小雪なんかよりはずっと良かったよ。

映画全体としては、見せ場もたっぷりあるし(私のお気に入りは疾走する新幹線の屋根の上での死闘。まるでコミックそのもの!というバカバカしさがサイコー)、誰が真のワルなのか、というひねりも悪くないのだけれど、アクションが間延びしてしまっている箇所や、何人かのキャラクターの掘り下げがいかにも足りないところがあったのは残念。



ちなみに、東京に住んでいる人間だったら、アレ?アレレレ?という地理的な矛盾が出て来ます。
(ヒント:東京タワーがすぐ近くに見える寺(芝の増上寺)→髙田の馬場→上野は徒歩じゃ行けないよ〜)

タイラー・ペック&ロバート・フェアチャイルドが教える1週間

娘の教室、ウエストサイド・バレエのサマー・プログラムも早いもので5週目に入りました。
今週1週間は、ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル、タイラー・ペックとロバート・フェアチャイルドがバレエ、ポアント、ヴァリエーションを教えてくれます。

こちらはタイラー・ペック嬢。
11歳の時にウエストサイドでバレエを習っていたこともあるそうです。

こちらはロバート・フェアチャイルド氏。
タイラーとは婚約者同士でもあります。

娘はロバートの方が好きなんだそうで。理由は「教え方が面白い。ナイスだしフレンドリー」だそうで、今日はヴァリエーションのクラスで「Good!」と言われて名前を聞かれた!と舞い上がっておりました。そんな事で舞い上がるなんて可愛いもんですわ。(笑)

ロバートが教えているのは、バランシンが振り付けたニューヨーク・シティ・バレエの看板バレエ(?)の1つ、「スターズ・アンド・ストライプス」の女性ダンサーのヴァリエーション。



この動画の5:12から始まって6:25に終わるヴァリエーションだそうです。
1分ちょっとの長さのヴァリエーションだけど、まあ良く飛ぶわ、良く回るわで、さすがバランシンという感じの振付。でも、娘曰く「すっっっっごく楽しいんだよ!」だそうで。
まあ、普段のクラスでは習えないヴァリエーション。夏こそ、いっぱい学んでくださいな。

Saturday, July 20, 2013

ポアント・ジプシー、続行中(とほほ...)

去年、しばらくの間、履いていたブロックのソナタとは破局を迎えた(笑)うちのバレリーナさん(a.k.a.我が娘)、カペジオのグリッセとブロックのBモーフに出会った経緯は5月の日記に書いたけれど、その後、ブロックのBモーフは「足のアーチに合わない、まっすぐ立てない」とクレームがついて、10時間履くか履かないかのうちにお払い箱(74ドルもしたんですけど?−涙)。
カペジオのグリッセは調子が良いようなので、常連ショッパーとなっているAll About Dance(一般の店で買うより1〜3割安い+買い物額関係無しで送料無料+オレンジカウンティに在るので注文後2〜3日で届く)で、現在使っているものと全く同じものを一足、注文。めでたく到着後、ゴムとリボンを縫い付ける前に念のため試し履きしてもらったら、

「キツイ、足が入らない、痛くて立てない」

え?だって、今日もレッスンで履いたのと同じモデル、サイズ、タイプのポアントシューズでしょ?

「うーん、今履いているのは履き慣れたから履けてるけど、新しいのはダメ」

ええ〜〜?そんなのアリですか?

6月下旬から始まった教室のサマー・プログラムで週6日、毎日、ポアントを履くから、やっぱり2足をローテーションしているのでは不安だし、そのうち1足はゲイナー。ゲイナーは出来るだけ履いて欲しくないので、どうしても3足目が無いと...

というわけで、再びダンス・ストアのジェニーさんにフィッティングしてもらう。

まずは念のためにカペジオのグリッセを。

「やっぱりダメ。合わない」

そこで、また1からスタート。カペジオの他のタイプ、サフォーク、ソーダンカと、娘は次から次へと履いていくけれど、「うーん」、「ダメ、全然ダメ」、「ピンとこない」と次から次へとリジェクト。

タメイキが出始めたジェニーさんだったけど、「じゃあ、これは?」と持って来たのはミレラ(Mirella)。前回、娘のクラスメイトに薦められてミレラを試し履きしたものの、合わなかったので「ミレラはダメなんじゃ?」と言ったら、「これ、今週、入って来た新しいモデルなのよ」とのこと。
で、履いてみたら

「うん、良い感じ。好き〜」

あーー、良かった。なんだか、ガラスの靴がシンデレラにピッタリだった、の逆バージョン、シンデレラにピッタリのガラスの靴を掘り当てた気持ちになりましたよ、母は。

これがミレラの新しいモデル、ウィスパー(Whisper)。
(2回履いた後なので、若干クタっとなってますが...)

横から見たところ。ヴァンプが比較的薄め。すごく軽量なのも特徴。

今のところ、まだ3時間分しか履いていないけれど、調子が良いようなので、まずはホッとしました。
ミレラのウィスパー、まあ平均的な値段なんだけど、ミレラを扱っているネット・ショップが少ないのはちょっと困る。現在、新発売のウィスパーを扱っているのはさらに少なくて、アメリカ国内でも2サイトのみ。いずれも送料無料ではないので、結局、ダンス・ストアで買うのと変わらない値段になってしまう。(ダンス・ストアもメジャーなバレエ教室の生徒には10%割引してくれるのです。)それだったら、ダンス・ストアで買った方が試し履きできて安心だからね。
ウィスパーは、すごく軽くて華奢な感じのポアントなので、どれぐらい保つかが問題かな。

ところで、耐久性では定評のあるゲイナー。ところが、今、履いているゲイナーはクラス/リハーサル時間を20時間オーバーしたところなのだけれど、先端のサテンが破けて、中から黄緑色のプラスティックが見えてきました。

キチャナイ画像でゴメンナサイ。
丈夫が身上のゲイナーさんですが、2〜3足ローテーションして4ヶ月でこんな状態に...
いったいどういう踊り方してるんだ??

娘の話だと、仲良しのクラスメイトのSちゃんのゲイナーはもっと酷い状態だけど、Sちゃんはそのまま踊り続けているし、教室で現在実力No.1のスター・ダンサー、Lちゃんのゲイナーも似たような状態なのだとか。
ゲイナー は、プラスティックが見えて来たら先端だけスウェードを張り替えることができるというのを聞いたことがあったので、それをジェニーさんに聞いたら、「うーん、できることはできるけれど、その後、それほど保たないことが多いのでおススメできません」とのことでした。
ジェニーさんは、こういう状態のゲイナーで踊り続けるのは危ないから早いところ交換した方が良いという意見だったので、早速All About Danceで購入。All About Danceだと定価116ドルのゲイナーが87ドル。さらに、ちょうどやっていた「48時間限定15%オフ」というセールを利用したので、73.95ドル+taxという、定価の2/3以下の御値段で買えてラッキー♪でした。
ただ、ゲイナーはゴム付けがもんのすごく大変。ダンス・ストアでもゴム付け+リボン付けの有料サービスをしているけれど、他のメーカーが10ドルなのに対してゲイナーは15ドルと割増料金になっているのも納得の大変さなのよねえ...うーん、憂鬱...

Thursday, July 18, 2013

「パシフィック・リム」


先週の7月10日、ギレルモ・デル・トロの新作、「パシフィック・リム」の試写に行った。

「パシフィック・リム」は、太平洋の海底から巨大怪獣が次々と生まれて来て、環太平洋(Pacific Rim)沿岸の大都市を攻撃してくるのに対し、人類が国際的に団結して、怪獣たちと同サイズのロボットを開発して戦う、という話である。

アレ、それってどこかで聞いた設定なんですけど??

と思う日本人は絶対多いはず。
だって、それって「ウルトラ・シリーズ」そのものだから。

それもそのはず。「パシフィック・リム」はデル・トロが少年時代に愛してやまなかった円谷プロの「ウルトラ・シリーズ」のオマージュなのである。
それが一番顕著に現れているのは、この映画の悪役である巨大怪獣たちが「kaiju」と呼ばれていること。monsterでもcreatureでもなくkaiju。
そして、そのkaijuたちを倒すロボット(こちらはなぜか「ハンター」を指すドイツ語のJaegerと呼ばれている)のパイロットの1人が菊池凛子演じる日本人女性だったりするのも、日本の怪獣映画・ドラマへのオマージュと取れるだろう。

ということで、まあ、ストーリーは予想通りに展開するし、登場人物も「ああ、この人たちは戦死するな...」(苦笑)なんて簡単に先読みできてしまったりするのだけれど、とにかく全編にデル・トロの「怪獣映画愛」が溢れているし、CGIの出来も素晴らしいから、こういうジャンルの映画のファンでなくても充分楽しめる出来になっている。
ちなみに、デル・トロ作品の常連役者、ロン・パールマンは今回もぶっ飛び演技を見せてくれて笑えます。(彼のファンだったら、エンド・クレジットが始まっても席を立たないよーに!)
それから、私の大好きなTVドラマ「The Wire/ザ・ワイヤー」のストリンガーベルこと、イドリス・エルバ(スタッカー・ペンテコスト司令官役)の存在感が実に素晴らしい。彼は本当に立っているだけで絵になる。喩えが変かもしれないけど、東映任侠映画時代の高倉健の存在感につながるものがあるという気がしました。



Tuesday, July 16, 2013

屋外バレエでバランシンを観る

もう既に1週間以上経ってしまったけれど、ロサンゼルスのダウンタウンに新しく出来たGrand Parkという公園の野外ステージで、ロサンゼルス・バレエがバランシン作品、「アゴン」と「ジュエルズ」からの抜粋シーンを踊るのが無料で観られるということで、家族3人で観に行って来ました。

バレエ、しかもバランシンの作品なんて観に来る人はそんなに居ないだろうとたかをくくって30分前に会場に着いたら、既に野外ステージ前の芝生は観客でぎっしり。後ろの方に何とか座れるスペースを見つけ出して、窮屈な姿勢はちょっと苦痛だったけれど、「アゴン」も「ジュエルズ」も未見だったので観られて良かったと思いました。

「アゴン」のパ・ド・ドゥ

ロサンゼルス・バレエのダンサーについては、ソロやパ・ド・ドゥを踊ったプリンシパル・ダンサーたちはさすがに上手かったけど、後ろの方で踊る群舞のダンサーたちは、動きにキレが無くてちょっとイマイチだったかなあ...男性ダンサーたちも、背が低かったりテクニックのレベルが高くなかったり、これまた残念。
「アゴン」も「ジュエルズ」も、全幕版はやはりニューヨーク・シティ・バレエか、せめてパシフィック・ノースウェスト・バレエで観たいと改めて思わせられたのでした。

Monday, July 8, 2013

「The Way, Way Back」


ジョージ・クルーニー主演の「ファミリー・ツリー」の脚色で、監督のアレクサンダー・ペインと共にアカデミー賞を受賞したジム・ラッシュとナット・ファクソンが監督デビューした作品「The Way, Way Back」を観た。

「The Way, Way Back」の主人公は、14歳の少年、ダンカン。両親が離婚して、母親と暮らしているが、母親が交際中のボーイフレンド、トレントは、嫌なヤツで好きになれない。なのに、今年の夏は、トレントのビーチハウスで休暇を過ごすという。ただでさえ憂鬱な気持ちを抱えているダンカンなのに、ビーチハウスに向かうドライブの車中でトレントに話しかけられる。同行している母親と、トレントのティーンの娘は眠りこけていて、ダンカンには逃げ場が無い。
トレント「自分を1から10のスコアで評価すると何になると思う?」
ダンカン「わからないよ」
トレント「何、言ってんだ。よく考えてみろ」
ダンカン「6、かな」
トレント「俺は、おまえは3だと思う。頑張りが足りないからな」
ダンカン「...」

映画は、こうやって、ダンカンの思いっきり沈んだ気持ちを観客にいきなり共有させる。
上手い導入部だと思う。

「The Way, Way Back」は、そんなダンカンが、トレントと母親との関係に悩まされると同時に、ビーチタウンで出会う人々に癒される一夏の経験を描いているが、大事件が起こるわけではないけれど、大笑いさせられたり、ホロリとさせられたり、全く飽きさせることなく、観客を最後まで楽しませてくれるのは、ひとえに登場人物たちのキャラクターの面白さと、それを演じる俳優たちの演技力の賜物だろう。特に、ダンカンを演じる19歳のリアム・ジェームズの自然さは凄い。演技しているようには見えないけれど、しっかりした演技だということも同時にわかる上手さ。そんなダンカンに対する対照的な大人たちをそれぞれ演じるのは、サム・ロックウェルとスティーヴ・キャレル。ロックウェルが演じるのは、ダンカンの兄貴分的存在になるオーウェン。大人にしてはすごくいい加減だけど憎めないナイスガイ・キャラを好演している。一方、珍しく悪役を演じているキャレルもさりげなく憎らしさを出していて巧い。

派手なアクションやSFXが満載の夏休み映画がひしめきあっているこの季節、こういう映画は、こってりとした料理の間に食べるソルベのような涼味を提供してくれること、間違い無しでしょう。