Sunday, March 6, 2011

The Adjustment Bureau



少し前からビルボードで宣伝されていて気になっていた「The Adjustment Bureau」(日本公開題名は「アジャストメント」)という映画。ルネ・マグリットの絵の中に出てきそうな格好をしたスーツ姿に帽子姿の男たちが出て来る映像を含む予告編を観てからは、いっそう好奇心をかきたてられていたので、試写会の案内状が来た時は即、RSVPした。

「アジャストメント」の主人公デイヴィッドは、ニューヨーク州の上院議員を目指す若き政治家。有利に進めていた選挙戦だったが、最後の最後にちょっとしたスキャンダルが報道されて、落選の憂き目を見る。敗北宣言をすることになっていたデイヴィッドは、自由な心で生きているダンサー、エリスと出逢い、彼女に強く惹かれるが、連絡先も聞かないまま別れてしまう。ところが、数日後、バスの中でエリスと運命的な再会を果たし、彼女の電話番号を聞き出す。それが、奇妙な冒険の始まりだとは知らずに...

「アジャストメント」は、人間の人生やこの世界の運命は最初から決められており、偶然の積み重なりに見えた事も全て或る大きな力によってコントロールされているという仮説に基づいている。その運命が狂い出した時、その大きな力(映画の中では単にChairman=会長と称されているが暗に「神」のようなものを暗示しているのは明らか)が軌道修正、すなわちadjustmentを行なうというわけである。
その軌道修正を担うのは「調整局」というレトロなスーツ姿の男たちであり、彼らは街中のドアを使って自由に空間移動をすることができる。(この映画を観た日本人で「ドラえもん」のどこでもドアを思いつかない人間は居ないと思うー笑)このあたりが、ちょっと近未来SFっぽいなあと思っていたら、それもそのはず、「アジャストメント」は近未来SF小説の名匠フィリップ・K・ディックの短編小説を基にしたものだった。

ロサンゼルス・タイムズ紙のケネス・テューランが指摘したように、「アジャストメント」はSFとしてよりも運命的に出逢う男女の物語として観た方が楽しめるというところもあったし、個人的にはエンディングがちょっと甘い気もしたけれど(まあ、ハリウッド映画に「未来世紀ブラジル」のようなエンディングを期待する方が無理か)、良質な作品であることは間違いない。

No comments: