Thursday, August 2, 2012

トータル・リコール


今日は「トータル・リコール」の試写会。

原作は言わずと知れたフィリップ・K・ディックの「追憶売ります」。1990年にポール・バーホーベンがアーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化しているゆえ、“リメイク”と呼ばれることも多いようだけれど、主人公の記憶が捏造されたものだという以外は、設定もかなり違っている別物映画と考えたほうが良いかもしれない。

時は2084年。世界のほとんどの地は化学物質で汚染され、人類は、英国連盟という名の近代国家と“コロニー(=植民地)”と呼ばれる混沌とした場所の2箇所に居住し、労働者階級はコロニーから英国連盟にある工場に毎日、出稼ぎに行っていた。工場で働くダグは、希望の見えない日常に嫌気が差して、“リコール”という虚偽の記憶を植えつける現実逃避的な娯楽を試してみようと思いつく。架空のアイデンティティはシークレット・エージェントということになって施術を始めようとしたその時、警察の襲撃を受け、リコールの店員は全員死亡するが、ダグは自分でも驚くような身のこなしで警官たちを全員、倒す。動揺した気持ちのまま急いで帰宅したダグは、妻に何が起きたかを話すが…

まず映画全体の印象を書くとすれば、まるでビデオゲームのような映画だということ。カメラワークも編集も、とにかくペースが速い。ビデオゲームの方が映画よりも身近なメディアだという世代には抵抗が無いのかもしれないが、根っからの映画人間の私には、血が通った人間がスクリーンに映し出されているというよりは、デジタル技術で作り出されたキャラクターが超人間的な動きをしているようにしか見えなかった。
次にコロニーの街のデザインが、「ブレードランナー」のセットをそのまま持ってきました、と聞いても驚かないぐらいそっくり。製作者たちは、おそらく同じ原作者の作品を基にした「ブレードランナー」へのオマージュのつもりで、そのようなプロダクション・デザインにしたのかもしれないが、あまりに似てい過ぎて、なんだかちょっとえげつない(?)かもと思ってしまった。
それから、アクションシーン満載で、なかなか良く出来ていたシーンもあったのだけれど、とにかく全体がデジタル・エフェクツで構築された世界というのがあからさまなので、リアリティ感覚が薄く、いまひとつ入り込めないという気がした。このあたり、クリス・ノーランなどと比べると、監督のレン・ワイズマンは、まだまだ「格」がずっと下だなあ…と思わざるを得なかった。

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